脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

脳脊髄液減少症について

脳脊髄液減少症について

脳脊髄液という脳と脊髄の周囲を満たす水が減少することにより、頭痛、頚部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠感など様々な症状を訴える疾患です。

脳脊髄液減少症に対し、ブラッドパッチという脊髄を包む硬膜という膜の外側に自分の血液を注入し、髄液の漏れを止める治療が有効です。

平成24年、厚生労働省脳脊髄液減少症の診断・治療法に関する研究班が脳脊髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準を公表し、平成28年、脳脊髄液減少症に対する治療、ブラッドパッチがようやく保険収載されました。しかし、現状では脳脊髄液減少症に対する認知度はとても低く、懐疑的な意見もあり、脳脊髄液減少症であるにもかかわらず、適切に診断されない症例が少なくありません。

また髄液が減少する病態の診断名に関して、低髄液圧症候群、脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症などの呼称が唱えられ、混乱が生じています。大雑把に、びまん性硬膜造影像を示す症例は低髄液圧症候群で、それ以外を脳脊髄液減少症、脳脊髄液漏出症と考えると理解しやすいと思います。

私は平成18年春より、山王病院にて脳脊髄液減少症の診断・治療に携わらせて頂いています。治療症例は、2,000例を超え、そのうちの約9割が脳脊髄液減少症、1割が低髄液圧症候群です。

山王病院でのブラッドパッチ治療有効率は脳脊髄液減少症に対しては、軽微な改善も含めて約75%です。一方で、約20%の方々に治療効果が認められず、稀に悪化例が存在するなどの問題も抱えています。
小児期発症の脳脊髄液減少症治療も積極的に行っています。山王病院では15歳以下に発症した脳脊髄液減少症患者は300例を超えます。治療成績は成人よりも良好であり、特に発症から治療までの期間が5年以下の症例は、有効率90%以上です。

低髄液圧症候群は、治療予後良好で完治率95%です。しかし、低髄液圧症候群の約1/3に慢性硬膜下血腫を合併します。当院では、慢性硬膜下血腫を合併した低髄液圧症候群の治療も積極的に行っており、治療症例は180例を超えます。治療法として、保存的加療が有効でない場合はブラッドパッチを先行すべきと考えています。血腫量が多い症例や、髄液圧が上昇している症例では、一期的にブラッドパッチ直後に血腫洗浄術を行う事が安全でと考えています。このような治療方針に基づき、慢性硬膜下血腫を併発しても治療時期を逸しない限り治療予後が良好です。

「(特発性)低髄液圧症候群」と診断されている症例は、早期に治療しないと慢性硬膜下血腫を合併し、時に生命を脅かす状態となる場合がありますので、早期の受診を考慮します。特に慢性硬膜下血腫合併症例は、早急な治療を要する場合がありますので、山王病院の医療連携係に問い合わせ頂けたら幸いです。 

(治療症例数は平成31年4月時点)