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小児期学童期に発症した脳脊髄液減少症 治療予後と問題点

小児期学童期に発症した脳脊髄液減少症 治療予後と問題点

第45回 日本小児神経外科学会 抄録です。

小児期学童期に発症した脳脊髄液減少症 治療予後と問題点

Clinical analysis of cereborspianl fluid hypovolemia in childhood and adolescence:
高橋 浩一山王病院脳神経外科
Koichi Takahashi Department of Neurosurgery, Sannou Hospital  

目的

小児期(15歳以下)に発症した脳脊髄液減少症について治療予後を中心に検討した。

対象と方法

対象は、15歳以下に脳脊髄液減少症を発症し、発症から5年以内にブラッドパッチを施行した167例(男性81例、女性86例、平均年齢13.2歳)である。

結果

ブラッドパッチ前は、欠席せずに通学できる症例(Grade 1)が10例 (6.0%)、症状のため、通学できる日が限られる症例 (Grade 2) が71例 (42.5%)、通学不能例 (Grade 3) が46例 (27.5%)、ほとんど寝たきり状態 (Grade 4)が、40例 (24.0%) であった。これがブラッドパッチ施行後には、症状消失(Grade 0)が69例 (41.3%)存在した。またGrade 1が35例 (21.0%)、Grade 2が47例 (28.1%)と、9割以上が、就学可能な状態に改善した。一方で、Grade 3が12例 (7.2%)、Grade 4 が4例 (2.4%)と、難治例も存在している。

考案

小児期発症の脳脊髄液減少症に対するブラッドパッチは成人症例と比較して有効である。しかし、脳脊髄液減少症小児例の認知度が低く、治療可能施設が限られるなど課題が残されている。また近年問題となっている、HPVワクチン関連免疫異常症候群(HANS)と診断され、ブラッドパッチが効果を認めた症例を経験している。これら症例の蓄積により髄液の機能について新たな知見が得られる可能性がある。

結論

脳脊髄液減少症小児例において、ブラッドパッチは有効な治療法である。そのため本症の認知度向上が望まれる。頭痛をはじめとする難治性の不定愁訴症例では、脳脊髄液減少症の可能性を考慮すべきである。