脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

脳脊髄液減少症を知って

脳脊髄液減少症を知って

先日、千葉日報オンライン・トップに取り上げて頂きました。

http://www.chibanippo.co.jp/news/national/369639

病気の悩みに加え、理解されない辛さを訴える患者は少なくありません。

このような機会により、脳脊髄液減少症の認知度が向上する事を祈ります。


今年4月に有効とされるブラッドパッチ療法が保険適用となり、脳脊髄液減少症を取り巻く環境は、今年大きな転換点を迎えた。しかし、治療できる病院は少なく病気への理解も低い。患者や支援者の「この病気を知って」という声から、医療体制や教育現場の在り方を探る。  

「体調が普通に見えてしまい、つらさを理解されないのがつらい」。脳脊髄液減少症と診断された松戸市に住む中学3年の男子生徒(14)が苦しみを打ち明けた。「無気力」「甘え」などと見る周囲の無理解、適切な治療を行える病院が少ないことも生徒と家族に負担を強いている。少しでも環境が改善されるよう「この病気をもっと多くの人に知ってほしい」と訴えた。

生徒は中学1年の12月、テニス部で球拾いをしていた時、先輩生徒の運ぶ防球ネットの枠が右側頭部にぶつかった。その場で気を失ったが、顧問はすぐに救急車を呼ばず、意識が戻った生徒を歩かせたという。  

病院ではコンピューター断層撮影(CT)で頭部を調べたが異常は見つからなかった。日を追うごとに頭痛がひどくなりながらも学校には通ったが、ある日歩けなくなり救急搬送された病院で脳脊髄液減少症を疑われ、東京都港区赤坂の山王病院を紹介された。  

生徒を診た山王病院脳神経外科副部長の高橋浩一医師(51)は「放射線同位元素(RI)を使用する特殊な画像検査で、腰椎より脳脊髄液が漏れ出ていた」と説明する。衝撃を受けた頭部よりも、脊髄の弱い部分から漏れることが多いのだという。  

生徒のように頭を打った場合、頭部外傷性疾患や難治性むち打ち損傷などと診断されやすい。適切な治療もないまま症状が続き、しまいには周囲が「動けば治る」「怠け病」と患者を心身共に痛めつけることもあるという。治療は、初期には安静、点滴、水分補給が有効で、それでも症状が続く場合、患者本人の血液を患部に注入して穴をふさぐブラッドパッチ療法が有効とされる。  

生徒も昨年5月に同病院で高橋医師から同療法を受けた。腰から血液を注入すると、発症から5カ月間も耐えた痛みが消えていった。「重かった頭が軽くなり、すぐに動けそうな気がした」と振り返る。  しかし、完治には至っていない。3年生になり特別教室から一般教室に戻り、修学旅行も制限付きながら参加できたが、今でも激しい運動はできず、疲れやすくて集中を欠く。勉強も遅れた。目立った外傷がないので、はた目に普通に見えてしまい、つらさが理解されない。「みんなとずいぶん差が広がってしまった」。発症から2年近くがたとうとしている。  

適切な初期対応や、すぐ治療を受けられる病院が近くにあったなら、生徒の経過も違っていたかもしれない。「けがの前は将来の事も考えられたけど、今は全く先が見えない」。環境改善を祈りながら、病気と闘っている。