特発性低髄液圧症候群と脳脊髄液減少症
- 2013.11.19
- 脳脊髄液減少症
特発性低髄液圧症候群と脳脊髄液減少症は、治療法はともにブラッドパッチですが、異なる病態と考えています。
特発性低髄液圧症候群SIH: spontaneous intracranial hypotension は、
- 軽微な外傷、もしくは誘引なく発症
- 画像上、典型的な所見を呈する事が多い
- 髄液圧は低圧の事が多い
- 予後良好
- 慢性硬膜下血腫を合併する事がある
といった特徴があります。
頭部MRI上、びまん性硬膜造影を示せば、ほとんどの症例が、特発性低髄液圧症候群と考えて良いでしょう。
RI脳槽シンチのみならず、MRミエロ、CTミエロでも異常所見が高率に認められます。
これに対し脳脊髄液減少症は、
- 交通事故など、強い外傷で発症する事がある
- 原因不明例も少なくない
- 画像上、典型的な所見を呈する事が少ない
- 髄液圧は正常圧
- 治療改善率:約75%
- 胸郭出口症候群を合併する事がある
といった特徴があります。
私見ですが、典型的な症状や兆候を示す特発性低髄液圧症候群に対し、それ以外が脳脊髄液減少症と考えています。なので脳脊髄液減少症は、原因を問わず、非特発性と考えるべきとも思っています。
また脳脊髄液減少症は外傷性と特発性に分類され、特発性は原因不明の脳脊髄液減少症についてと広く思われていますが、少なくとも狭義においては、特発性=特発性低髄液圧症候群のみと考えるべきでしょう。
ちなみに山王病院では、脳脊髄液減少症症例の方が圧倒的に多いです。
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高橋先生
こちらのコメントを拝見し、もやっとしてたのが、ちょこっとスッキリしました。ありがとうございました。
私は、これまでの人生で、様々衝撃は受けておりました(誰でもそうだと思います)が、ぴんぴんして元気印で長年過ごしてきたのに、今回、強い衝撃で脳脊髄液減少症になりましたので。
8様
コメントありがとうございます。
脳脊髄液減少症の治療成績を改善するためにも、髄液について勉強していなければなりません。
そのためには低髄液圧症候群について、検討していく事が重要と強く感じています。
高橋 浩一先生
いつもお世話になっております。
貴重な情報をいつもありがとうございます。
私は、追突事故で、脳脊髄液減少症になりました。
治療継続中なのですが、その過程で、いろいろなことが分かってきました。
①MRIミエログラフィーで、オーロラサイン
②RI脳槽シンチで陽性所見
③造影脳MRIでびまん性硬膜造影所見
④CTミエログラフィーでの頚椎に複数の漏出像
⑤外傷性胸郭出口症候群
です。
⑤の胸郭出口症候群については、左斜角筋が変性、萎縮し、瘢痕組織化しているそうです。
高エネルギー事故だと言いつつも、交通事故では絶対に髄液が漏れるはずがないという先生もおられましたが、なぜ、その時、すぐに治療できなかったのか、どのような意図で治療されなかったのか、後遺症を抱える今、とても残念な気持ちです。
骨折などの外傷のない交通事故患者の場合、まだ、脳脊髄液減少症専門医の先生にたどり着くまでに、時間がかかってしまいます。
脳脊髄液漏出症や脳脊髄液減少症が保険病名になっていたら、このような治療タイムラグはなかったのではないでしょうか。
週末に損害賠償学会が開催されますが、一部の詐病患者のために、症状に苦しむ多くの交通事故被害者の治療を遅らせることのないよう、斯界の方々にお願いしたいです。
私が交通事故に遭った時点で、脳脊髄液減少症研究会があって本当に良かった、幸運だったと、心から思っています。
揺るぎない気持ちで治療継続できることに心から感謝しています。
高橋先生の益々のご活躍とご健康を心よりお祈り申し上げます。
M様
コメントありがとうございます。
本当に、ここ数年で、色々な事が分かってきました。しかし、いまだに保険適用になっていません。
先日の賠償学会では、「そんな疾患は存在しないから、早くやめてしまえ!」といった声もありました。
治療により回復された方々を増やし、声を大きくしていく事も重要と考えています。皆様に元気になって頂きたいです。
高橋先生、はじめましてこんにちは。
父が硬膜下血腫、脳髄液減少症の疑いでそちらの病院を紹介されました。
そして偶然この記事をみつけてコメントしてみました。
父は良くなりますかね?後遺症とかのこってしまいますか?
もし先生にお世話になるときがあればどうぞ宜しくお願いします。
み様
コメントありがとうございます。
何とか頑張ります!
高橋先生
こんにちは。
>先日の賠償学会では、「そんな疾患は存在しないから、早くやめてしまえ!」といった声もありました。
私が最初にかかった病院の脊髄部門のトップ医師もそういう立場の人でした。
原因となる怪我をした会社の紹介で行ったのですが、最初にその病院にかかったのが、大きな失敗だったと思います。
そういうことを言う人間こそが、この症状を経験すれば良いのに、と思います。
I様
コメントありがとうございます。
反対意見は依然として多いのはわかっています。
そこは日本的にネガティブキャンペーンをせずに、症例の積み重ねや学会、論文などでアピールしていこうと考えています。