脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

理解される事の大切さを再認識

理解される事の大切さを再認識
O.Sさん(男性)。

結婚し、長男が産まれ仕事もさらに充実してきたある時、交通事故に遭いました。

比較的軽い事故であり、様子を見ていましたが、その後、頭痛や倦怠感などが日に日に強くなっていきます。

元来、まじめな彼は、それでも仕事を頑張ろうとしましたが、体が悲鳴をあげ、就労不能どころか、日中でも半分以上、寝ている状態になりました。しばらく様子をみても、一向に良くなりません。

病院を数ヶ所受診しましたが、異常を指摘されず、「精神的な問題」「怠け病」と判断されました。中には「詐病の疑い」もあると言われた事もあったようです。

ある日、O.Sさんは山王病院の私の外来を受診しました。そして、「脳脊髄液減少症」と診断し、ブラッドパッチを施行しました。治療後、すぐに効果は表れませんでしたが、数ヵ月後より、徐々に改善しはじめ、いよいよ復職可能な状態となりました。

しかし、そこで家族をはじめ、周囲の不理解が彼を苦しめました。体調がまだ不充分な所に、精神的な打撃が加わり、相当追い詰められました。そして、ある日、ある病院から、「O.Sさんが、加療服薬による自殺未遂で入院」

との、知らせが入りました。彼は、重度のうつ病を合併し、心療内科にて入院加療を受けましたが、その後も数回、自殺未遂をしました。

そんな彼を救ったのは家族でした。私自身も何度か家族に会い、病気について説明を重ね、しだいに家族の理解が深まっていきました。そして家族の理解が、かなり得られた瞬間、彼の症状は劇的に改善しました。それから数ヶ月経過し、今年の夏から職場に復帰しました。

脳脊髄液減少症を理解をする事の困難さを再認識するとともに、理解される事の大切さを再認識した想いでした。

O.Sさん、先日、久しぶりに私の外来を受診して頂きました。とても、とてもたくましくなった姿に感動でした。

現在は、病気を克服し、健康のありがたさ、働ける喜びを噛み締めているそうです。「病とは、闘うものでなく、仲良くするものである。」

という彼の言葉には、命を捨てる事まで考えた程のどん底から這い上がってきた過程が反映されているようで、非常に重い物を感じました。