脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

セカンド・インパクト症候群

セカンド・インパクト症候群

最近、中学校武道の必修化について、質問やコメントを求められる事があります。

私は、やるのであれば、受け身の練習などから開始するなど、順序をきちんとして、また準備運動をしっかりして、ケガの予防対策をして、やるべきと考えます。

またリスクを恐れて萎縮するのではなく、万一のケガ発生時の対応、対策が重要でしょう。

そのために、「脳脊髄液減少症」の存在を広く知って頂く事が大切です。

それから柔道など頭を打撲する可能性がある場合、頭部外傷に関する知識を持つべきです。

その中で、「セカンド・インパクト症候群」という、複数の頭部外傷が存在する場合、二度目の頭部外傷が一度目の外傷より軽い衝撃であっても、急性の脳浮腫を呈する病態が知られています。

脳震盪など比較的強い頭部の外傷を受けやすいスポーツでは、特に注意が必要になります。

セカンド・インパクト症候群は、1973年にR.C.Schneiderにより最初に報告され、1990年代より報告例が増加してきました。

このセカンド・インパクト症候群は、発生頻度はそれ程多くありませんが、発症した場合、死亡率が約50%と非常に重篤となるため、柔道やボクシングなど頭部外傷が頻回に生じ得るスポーツの指導者は、その存在を知っておく必要があります。

セカンド・インパクト症候群の発生機序に関しては、確定的でありませんが、脳血管径の調節が不能となり、脳血流異常が生じて、脳浮腫などを生じると考えられています。

さらには一度でも、頭蓋内出血を起こすと、出血により、頭蓋内に癒着を生じて、脳血管の可動性が乏しくなり、新たな外傷により、頭蓋内出血や脳浮腫を生じやすいと言われています。

 ちなみに日本プロボクシング協会では、一度でも、頭蓋内に出血を生じたボクサーに対しては、強制的に引退勧告を行い、プロボクサーとして、試合をする事を禁じられます。

一般に、多少の症状や辛さがあったとしても、試合や練習をやりたがる選手は少なくないと思います。

しかし、セカンド・インパクト症候群の存在などを念頭に入れ、脳震盪後の生徒、選手に対しては、本人がたとえ希望したとしても、定められた期間は、頭部への衝撃が加わりやすいような練習は自重すべきとのアドバイスが望ましいでしょう。