統合失調と診断されて
- 2009.04.13
- 脳脊髄液減少症
O.Mさん(女性)は長年、統合失調症をはじめとした、精神疾患と診断され、苦しまれてきました。10年以上の闘病生活を経て、脳脊髄液減少症と診断し、治療により症状が改善され、新たな道を歩まれています。
しかし、その闘病生活は、想像を絶する苦悩がありました。彼女から、同じような状況で苦しまれている方々もいるはずで、自身の経験談により、治療に結びつく事があれば非常に嬉しい事と、長文のメールを賜りました。
一部、訂正を加えていますが、ほとんど全文を掲載します。
O.Mさん、本当に貴重なメールをありがとうございます。益々、御活躍下さい!
私が統合失調症と診断された経緯を、長くなってしまいますが説明させてください。
いすみ市の講演で先生が初めにお話しされた初めて診察された脳脊髄液減少症の方の場合のように、私自身、医療現場、特に精神科の診断の不明確さに疑問を強く抱いているので、簡単にでも順を追って説明させていただきたいと思います。
統合失調症の診断は20歳の頃ではなく、転居での引き継ぎミスによってレッテル張りをされた、という印象を強く抱いています。
大学生(二十歳)の頃、頭痛、めまい、吐き気と食欲不振がひどく、通常の食事はとれず、ゼリーのようなものでも気持ち悪くて食べられない、最終的には水分も飲めず、トイレにも行けない、という状態になってしまいました。
今思うと脳脊髄液減少症で説明の付く症状ばかりですが、どの病院でも原因が分からず、でもすぐに点滴が必要なのは素人目にも明らかだったので、大学の教授の紹介で、某国立大病院心療内科に緊急入院させてもらいました。
その時の診断が「大うつ病性障害」です。その時認可されたばかりだったSSRIから三環系抗鬱剤まで新旧大量の処方を受けましたが改善はなく、もしリストカットで退院していなければ、間違いなく電気ショック療法を受けさせられていたと思います。
自傷をする患者は心療内科では扱えないとのことで精神科の専門病院に転院させられましたが、そこでは家族すら何の説明も受けないまま、意識がなくなるような投薬をする治療だったので、数日意識がない私を、家族が必死に退院させてくれました。
ただ、退院しても食事はとれないままなので、どうしても点滴だけでも必要でしたので、当時の自宅から近い某私立医大附属病院精神科にお世話になりました。
担当してくださった先生は診療時間外でも点滴をしてくれたり、とても親身に診てくださり、その時は私も混乱している状態だったので、人格障害という診断を受けました。
それは、その当時の私の状態では誤りではないと思います。投薬は効果があったことがないのですが、様々な種類を試した結果、・鬱状態にも効果がある・新薬で副作用が比較的少ないとの理由からセロクエルを使用し、大量でも効果がないので減量してゆき、最終的には25~50mg、プラス眠剤、胃薬、下剤の処方になりました。
その医大に通っていたころは自殺企図も多く、一番辛かった時期ではありますが、大学への復学を目標に、週1,2回のアルバイト(予備校でチューターをしてました)は私が大学生で居られる時間でもあったので、必死に続けていました。
その後に転居し、早く回復したい一心で、無理を押して電気店でアルバイトを週4回したのがたたって動けなくなり、近くのクリニックに紹介状を持参して通うことにしました。
そこで初日に言われたことは、「セロクエルは統合失調症患者が飲む薬だから、処方されているあなたは統合失調症だ」ということです。
セロクエル自体は統合失調症にかぎらず、強い不安感や緊張感、抑うつ状態にも使用されるものなのに、そんなことはお構いなしでした。しかも「うちには25mg錠なんて置いてない」との理由で200~300mgに増量、結果さらに動けなくなりました。
定年退職後にクリニックを夫婦でされている方だったので、かなり古風な偏見もあり、入院しないだけで有難いと思え、という方針なので一切治療は進まず、最後の診察では「お前みたいな患者を診れる医者なんて存在しない。私がすべての精神科にお前を診察しないよう通達を出すから、お前なんて野たれ死ねばいい」と言われました。
そこまで言わせた私も私ですけど、医療に従事する人の言葉ではないですね。 その頃には自傷もなくなっていたので、体調がもし良かったなら精神科への通院自体を止めていたでしょうが、どうしても起き上がれないなど脳脊髄液減少症の症状が不安であり、一度も妄想、幻覚、幻聴などの陽性症状など表れたことはないですが、通院を止めることは怖くてできず、一度紹介で入院したことがあったK病院にお世話になることにしました。
K病院で当時お世話になった先生の診断も統合失調症でしたが、納得できずに何度も診断理由を尋ねたことがあります。
その先生が言うには「私は酷いところは見たことないけど、紹介状に酷そうなことが書いてある。だから、今動けないというのは、統合失調症の陰性症状の無為、自閉、感情鈍磨、冷却だ。」とのことです。
ただ、人格障害に関しては、とても厳しく治療してくださり、その点は感謝しています。
例え思うように動けるようになることがなかったとしても、何とかして生きてゆかなければいけないと、そう思うようになれたことは、その先生のお陰だと思っています。
ただ、体調に関してはまったく理解は無く、めまいに対してトラベルミンの処方と、「あなたの目眩なんて、全然大したことはない。耳からくる本物の目眩の人は、あなたなんかとは比べ物にならないほどの大変さなんだ」という診断です。
数時間意識を失って救急車で運ばれた際も、大事みたいに騒ぐなんて妄想が表れていると判断したのでしょうね。私の訴える体調不良はすべて被害妄想。それに巻き込まれている家族も異常。地元の総合病院の脳外科でのMRIでも異常がなかったのに、まだ騒いでいる統合失調症患者、としか扱われませんでした。
ですが、その先生に最後に「人格障害はすっかり良くなった」と言っていただけたことはありがたかったです。 その先生が退職されて引き継がれたのが、山王病院へ紹介状を書いていただいたA先生です。
「統合失調症の所見は見られないし、人格障害も今はまったくない。でも、お薬なんて飲んでおいてもいいんじゃない?」ということで、何のために飲ませたいのか、ただその方が医者として責任を負わずに済んで楽なんでしょうが、患者としては納得のいかないことばかりでした。
長くなってしまいましたが、これが私の6年間の通院の概要です。
振り返ると、脳脊髄液減少症の辛さと合わない投薬による辛さから来る極度の不安によって人格障害を発症、というか、心細いとか、生きている感覚が持てないとか、考え方が幼稚になったとか、そういうことだと思います。
それは自分でも納得できますが、いつの間にか加えられた統合失調症には、未だに微塵も納得できません。
その診断基準ですが、私に言われたことは、先に書いた前の医師による処方と、「経験を積めば、目つきを見れば分かる」というだけです。
病名が付与された後は、「私は知らないけど」と2人とも言います。長年、数値や画像で客観的に判断できる基準さえあれば!と思い続けていたので、今回小脳扁桃の下垂、RI画像により画像と残存率の数値が明確に見えるというだけでも、私にとっては、もの凄く画期的なことなのです。
多くの患者さんも同じ気持ちだと思いますが、高橋先生に出会えるまで正確に病状を理解してもらえたことが一度もなく、理解してもらおうと言えば言うほど異常だと思われ続けてきました。
そんな中でも、少しでも良くなる可能性があるならと服薬も続けてきましたが、本当に、脳脊髄液減少症と診断されてよかった!高橋先生に診ていただけてよかったです!
あとは、精神科医がびっくりするくらいの回復をするだけですね。
今はやりたいことが沢山目の前にあって、とても心も軽いですし、過去の出来事に文句や不平を言いながら生きるつもりもまったくありませんが、医療に対して強く問題意識を抱えているということを知っていただくためにも、また、教育現場にしても医療現場にしても、理解不足や先入観によって苦しんできた事を一度先生にご説明させていただきたかったので、メールさせていただきます。
私個人の意見としては、心無い暴言ともとれる言葉は除いて、多くの医師を責める事はできません。
「脳脊髄液減少症」という病気は、認知度がまだまだ低く、本症を存知ない医師が多数います。いかに医学が進歩しても、各医師が、特に自分の専門分野を中心に勉強される事がほとんどで、本症に関わる余裕がないとも思います。また、否定的な意見も存在します。
ただし、様々な症状を呈する人がすべて、脳脊髄液減少症とは思いませんが、 O.Mさんのような方がいるのは、私の経験からしても間違いありません。
私自身、本症の啓蒙も含め、頑張っていきたいと思います。
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立花 夢果さん 2009.04.14
先日はありがとうございました。
先生のブログ毎回拝見させていただいています。
今回の手紙の内容非常に心に刺さるものがあり、なんだか他人事とは思えないような感じがしました。
>私個人の意見としては、心無い暴言ともとれる言葉は除いて、多くの医師を責める事はできません。
すごく同意です。やはる画像や血液などの検査値で診断するやり方ではどうしてもそのようになってしますと思います。除外診断をしていって残ったものが統合失調症。っと私の場合もそうでした。(特に私の場合は本当に過去にそのような病気にかかったことがあるので再発かと思われました)
もちろん画像や血液データを読んで判断することは非常に重要で、何よりこれが最もスタンダードかつ合理的であるのはたしかであると思います。
しかし、あまりに目の前の数値ばかりおって患者さんを見ないドクターが多いのも現状です。
木を見て森を見ずとはよく言いますが、数値を見て患者を見ずならいったい何を、誰を相手にしているのかよくわからない医療になってしまうと思います。
ちなみに私の場合、もう5年前になりますが、結局一年間大学病院内をまわりにまわった揚句たどり着いた精神科。
たまたま教授回診の際に教授と話をしていると一言「こいつ精神病ちゃうぞ、ちょっと内科のドクター呼んで」そこで呼ばれた元主治医に「なんでもかんでも分からんからって精神科にまわすなや、もっぺん検査やり直してこい。わしはようわからんけど統合失調とかとちゃうで、あ、そういえばこの前NHKで髄液がどうとかとかゆうとったわ。一遍脳外いってみてもろてこいや」とおっしゃられた脳神経外科受診によりRI脳槽シンチで確定、この病気の診断が下されたわけです。
少し変わった先生ですが(笑)いまでも非常に感謝しております。
長々と駄文すみませんでした。先生に励まされて少し前向きになりました。
では失礼します。
れおLi様
コメントありがとうございます。
諸検査で異常ないけれど、様々な症状を訴える → 精神神経疾患
という図式は、今も多く存在します。実際、上記の場合で精神疾患の症例は少なくないのですが、れおLi様を診察頂いた精神科教授は素晴らしい名医と思います。
精神科の先生から、少なくとも直接、このような事を指摘された事はありません。
話は少々それますが、脳脊髄液減少症患者様の場合、精神病の薬剤が効きにくい印象があります。(デパスなどの比較的軽い薬剤は除く)
闘病中に
看護師さんから
あなたおかしいよって
言われて
精神科を
受診し
双極性障害と診断されました
三環系の薬をのんでいましたが
二番目の担当医の酷い態度に憤慨して
薬を飲むのをやめました
三番目の主治医に代わったときに
その旨を告白し
そのまま経過観察となり
しばらくして寛解となり
通院していません
最近軽度の高次脳障害の疑いがある事が判り
本例と
同じようなケースではないかと
疑っています
よくよく検査しないと
いろいろなことに会うという事で
共感させられました
今さん様
コメントありがとうございます。
医療スタッフに、精神疾患と診断される脳脊髄液減少症患者は少なくありません。
適切な検査が望ましいと思います。