起立性腹痛
- 2009.05.08
- 脳脊髄液減少症
A. Uさん、男性。
交通事故で、腹部を強打し、腹部内臓損傷、胸椎骨折など重傷を負い、緊急の手術を要しました。
その後、全身状態は安定しましたが、腹痛の他に、頭痛、頚部痛、倦怠感など持続しました。
特にA.Uさんにとって辛いのは「腹痛」です。立ったり、座ったりすると数十分で強烈な腹痛が出現するため、ほとんど寝たきりの状態となりました。
腹痛は右腹部の腹筋がつるような痛みで、とても耐えられるものでないようです。
数か所の病院でも、「原因不明」、もしくは「腹部に大怪我をしたから、上手く付き合っていくしかない!」と判断されていました。
ある日、山王病院を受診しました。 私の経験上、腹痛が主訴の脳脊髄液減少症は診た事がありません。
「症状は典型的でないので、脳脊髄液減少症の可能性は低いと思います。」と、話しましたが、わずかでも可能性があるならば、検査を受けたいとの強い希望を述べられました。
RI脳槽シンチを行うと、髄液の漏れが確認できました。 ブラッドパッチに関して、「頭痛、頚部痛には効果が期待できるが、腹痛には効くかわかりません。」という説明をしました。
A. Uさんは治療を希望され、ブラッドパッチを施行しました。すると、すると、腹痛が何となく良い感じ!という事でした。
先日、外来受診されると、「だいぶ良くなりました。」と、平然と座っています。
治療前には、診察室であぶら汗を流していた、あの辛そうな姿はなくなりました。
「かなりの時間、立っていられるようになりましたので、これからは根性で頑張ります!」と、A.Uさん、事故前は凄いスポーツマンだったそうです。活躍を期待します。
ところでこれは「起立性腹痛」とでも呼ぶべきでしょうか?美馬部長も、このような症例の経験はないようです。
脳脊髄液減少症には、まだまだ、不明な点が多く存在します。研究とは、不明点を解決し、治療成績向上のために進めるべきと思います。
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高橋 浩一 先生
先生は、「ドクターハウス」という海外ドラマはご覧になっていますか? そこに出てくるDr.が、とても人間くさくて面白いです。日本の医療ドラマとちょっと違うし、そこに出てくる施設や用語は、先進的で、我々患者にとってもとても勉強になります。
で、その中で、主人公のDr.が語った言葉で、印象に残っているものがあります。
「患者がいれぱ、それを見た医師の数だけ診断の数がある。」という意味の言葉でした。
私たち患者は、「どの先生でも同じ見立て」であることに安心してしまいがちですが、元来、そんなことはあり得ないのだな、と考えさせる1シーンでした。
F様
コメントありがとうございます。
「ドクターハウス」は見た事ありませんが、非常に面白そうですね。今度見たいと思います。
>「患者がいれぱ、それを見た医師の数だけ診断の数がある。」
同じ診断をしたとしても、治療法など意見が分かれる事はしばしばあります。患者様の人生を左右するかもしれない問題も時にありますので、医師の間でも激しい討論になる事もあります。ちなみに私の所属していた医局は、教授が医局員の意見に耳を傾け、方針などを決める、封建的でない雰囲気があり、好きでした。
http://www.ntv.co.jp/dr.house/index.html
に詳細があります。深夜なので、録画でもなさって、是非どうぞ。
私が入院したときは、血液内科のチームだけでなく、外科の先生などもカンファレンスに加わってくださったそうで、多角的に診察していただいて、本当に心強かったです。
F様
コメントありがとうございます。それから、情報も頂き、重ねてお礼申し上げます。
是非、拝見したいと思います。
隣の医局は、隣国より遠い!と、耳にしますが、少なくとも私の所属していた慈恵医大脳神経外科医局は、他科と協力し、カンファレンスなども行い治療を行ってきました。御指摘の通り、多角的な判断が重要な事があると思います。