脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

起立性腹痛

起立性腹痛
A. Uさん、男性。

交通事故で、腹部を強打し、腹部内臓損傷、胸椎骨折など重傷を負い、緊急の手術を要しました。
その後、全身状態は安定しましたが、腹痛の他に、頭痛、頚部痛、倦怠感など持続しました。

特にA.Uさんにとって辛いのは「腹痛」です。立ったり、座ったりすると数十分で強烈な腹痛が出現するため、ほとんど寝たきりの状態となりました。

腹痛は右腹部の腹筋がつるような痛みで、とても耐えられるものでないようです。

数か所の病院でも、「原因不明」、もしくは「腹部に大怪我をしたから、上手く付き合っていくしかない!」と判断されていました。

ある日、山王病院を受診しました。 私の経験上、腹痛が主訴の脳脊髄液減少症は診た事がありません。

「症状は典型的でないので、脳脊髄液減少症の可能性は低いと思います。」と、話しましたが、わずかでも可能性があるならば、検査を受けたいとの強い希望を述べられました。

RI脳槽シンチを行うと、髄液の漏れが確認できました。 ブラッドパッチに関して、「頭痛、頚部痛には効果が期待できるが、腹痛には効くかわかりません。」という説明をしました。

A. Uさんは治療を希望され、ブラッドパッチを施行しました。すると、すると、腹痛が何となく良い感じ!という事でした。  

先日、外来受診されると、「だいぶ良くなりました。」と、平然と座っています。

治療前には、診察室であぶら汗を流していた、あの辛そうな姿はなくなりました。

 「かなりの時間、立っていられるようになりましたので、これからは根性で頑張ります!」と、A.Uさん、事故前は凄いスポーツマンだったそうです。活躍を期待します。

ところでこれは「起立性腹痛」とでも呼ぶべきでしょうか?美馬部長も、このような症例の経験はないようです。

脳脊髄液減少症には、まだまだ、不明な点が多く存在します。研究とは、不明点を解決し、治療成績向上のために進めるべきと思います。