圧較差について
- 2010.05.21
- 脳脊髄液減少症
基本的に物は、圧の高い所から低い方向に流れます。
水も電気もそうです。
髄液の循環を考える上にも、圧の較差は重要と考えています。
ちなみに脳脊髄液の存在するくも膜下腔の圧は正常では、大体70-180mm水柱です(側臥位)。
そして硬膜外の圧は非常に低く、通常、陰圧です。
この圧較差を少しでも減らすと、髄液の過剰な吸収が緩和されると考えられます。
ブラッドパッチには、直接の漏れを止める作用に加え、三浦真弘先生の指摘される硬膜外の圧を上げる作用が効果を示すと思います。
生食パッチが一時的にでも効果を示す原因として、硬膜外の圧力が上昇するからと推察しています。
続く
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髄液に関する基礎研究 2010.05.16
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点滴がなぜ効果的か 2010.05.22
高橋 浩一先生
いつもお世話になっております。
私はブラッドパッチの前に「生食パッチ」をして頂きました。
私の場合、硬膜外に生理食塩水を注入すると、すぐに視界が鮮明になり、頭痛もなくなりました。一過性でしたが、これも先生の想定内とのことでした。
「ブラッドパッチ」をした時も、高原の朝のように爽快になりました。
尿閉、頻尿が著しく改善されたので、翌日には、手足にしわができて、リストバンドに2cm以上遊びができるほどでした。
2回目のブラッドパッチ後、入院中から起床時の「もうろう」と「だみ声」が無くなりました。
強い痛みの後に出現した、皮膚炎も治りました。
点滴の効果も、一過性ですが、強力です。私は、点滴で床ずれが治りました。
いつもお世話になっている医大の先生からも、「リンパ圧」が上がるので効くと伺いました。
ところで、通常基礎研究では、試験薬を生理食塩水のようなバッファー(緩衝液)に溶かして、細胞や動物などに投与します。
細胞は、バッファーを投与して実験操作をするだけで刺激になり、spontaneous releaseという自発的な(細胞内からの)ある種の顆粒の遊離等が起こります。
そのために、実験では必ず、試験薬を入れないバッファーだけの「ブランク(空試験)」を行います。
新薬の臨床試験でもそうです。
本物の薬のように見える外観の、薬としての成分の入っていない薬理作用のない、「プラセボ」(偽薬)を使って、実際の薬の効果を2群の比較で検討します。
新薬の臨床試験の第三相試験(フェーズ・スリー)は、この「二重盲険法(ダブルブラインドテスト)」で行います。
患者を二つのグループに分け、一方には試験中の薬を、もう一方のグループにはプラセボを、投与している医師にも患者にもわからない状態で投与する方法です。
何も薬の成分が入っていないものでも、効くと思って服用すると効いてしまうというプラセボ効果があるので、それを除外して、新薬の本当の有効性を確認するために行うのです。
もしかしたら、生食パッチも「プラセボ効果」なのではないかという反論もあるかも知れません。
しかし、三浦 真弘先生の御研究の硬膜外圧の上昇効果を考えると、生食パッチやラクテックのような細胞外液を補充する等張電解質輸液が「プラセボ効果」で一過性に効いたのではなく、そのメカニズムは、硬膜外圧やリンパ圧を上昇させるという効果によって症状が改善した可能性が高いという先生の御推察に深く賛同致します。
M様
コメントありがとうございます。
プラセボ効果を確認すべきとの声は、良く聴きます。しかし、様々な状況で追い詰められている方が多い中、私は現状では、いかに症状を軽快させるかを考えています。
また、生食パッチの効果に圧較差が重要と考えている医師は私だけではありません。
高橋 浩一先生
先生のお答えを拝見して、とても心を打たれました。
脳脊髄液減少症研究会の先生方は、優秀なだけでなく、いかにして患者を救うかということを考えてくださいます。
本当にありがたいことだと思います。
お世話になっている医大の先生も、同じようなことをおっしゃっていました。
私の場合、事故から生活が一変してしまいましたが、病名ではなく、どうしたら再起できるのかを第一に考えて生きています。しかし、現実には、原因不明でなく、確定診断されないと治療を続け、苦痛を軽減することが出来ません。
また、現状では、自分のお金で治療しているので、治療できる人だけが助かればよいのか、ということにも疑問を感じています。
私は、不幸にして事故に遭ってしまいましたが、このような条件で事故に遭ったら人体にどの位ダメージを与えるのか、自動車会社にも物理学的に検証していただけたらと思っています。
自動車会社でも正面衝突の実験はされているのですが、追突実験のデータは公表されていません。
これまで、自動車会社の努力によって安全性の高い自動車が開発されてきました。
以前なら、死亡するような事故でも、内部損傷を起こして助かる方も増えていくと思います。
厚生労働省の医学的なご理解のほか、自動車会社のご理解も頂けたらと、心から望むのです。
M様
コメントありがとうございます。
私は決して優秀ではありませんが、そう言って頂き恐縮します。
ちなみに鞭打ち症の最初の報告は、第一次世界大戦中の飛行機急発進後に、頚部痛など多彩な症状を生じる事に端を発しているようです。
益々の病態解明が進む事を望みます。
高橋 浩一先生
私のつたないコメントに、こころ温まるお返事をいただき、心より御礼申し上げます。
「脳脊髄液減少症」は、名付けられてまだ新しく髄液を増やす特効薬もありません。
さらに、知らない人が多い病気ですので、なかなか適切な治療を受けることも出来ません。
「ブラッドパッチ」が有効な治療法ですが、治療は、健康保険が使えず十割負担で、病気への不安以外に医療費・生活費の心配を伴います。
私のケースが多くの人に知られるならば、この病気の早期診断・治療につながるかも知れません。
同じ苦しみを持つ人が一日でも早く適切な治療を受け、苦痛から解放されればと願っています。
前述のとおり、私は、厚生労働省研究班の研究施設で、除外症例となりました。
日本脳神経外傷学会所属の先生の診断では、脳の造影MRIで硬膜肥厚が認められないし、そもそもマルファン症候群(遺伝病で発生頻度は3000人~1万人に一人)以外では髄液漏れはあり得ないということでした。
私は、その施設で検査を待機している間にも症状が進行していきました。脳槽シンチによる画像診断は受けられませんでした。
厚生労働省のガイドラインで救済されない患者さんが出てしまわないように、完成度の高いガイドラインが出来ることを願っています。
また、基礎研究が進み、「生食パッチ」の効果で「圧較差」が御指摘されましたが、これが分かってくると、「プラセボ」の対照実験は、硬膜外に「針を刺すだけ?」というプロトコールになってしまうかもしれません。苦しんでいる患者さんには、大変残酷な話です…。
読みにくい文章もありましたが、患者ということでお許しください。
先生、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
M様
コメントありがとうございます。
認知度上昇と研究の成果が上がる事を望みます。
ちなみにブラッドパッチのプラセボ効果を確かめる場合は、御指摘の通り、硬膜外に針を刺すだけになると思います。
現状、このような効果を確かめる事は私にはできません。
質問です…
硬膜外の圧が上がる方法の一つに、妊娠ということは含まれますか?
もしそうであれば、思いあたることがあります。
はな様
御質問ありがとうございます。
>硬膜外の圧が上がる方法の一つに、妊娠ということは含まれますか?
はい!妊娠中は、比較的症状が軽いと言った話しも耳にします。
はな様の御経験など御教授頂けたら幸いです。
よこから入ってきて大変申し訳ありません。
はなさまはブラッドパッチを受けられたのしょうか?
そしてブラッドパッチ後に妊娠されたのでしょうか。
すみません。教えていただけないでしょうか。
高橋先生、コメント欄お借りします。
ふく様へ
ふく様が赤ちゃんを切望する時が、ふく様にとって妊娠出産に相応しい年齢なのだと思います。
赤ちゃんのためだけではなく、母親にとっても良い体調であることが子どもを育てるについて一番大切なことです。
髄液が多量に漏れている状況で、私は弱い母で申し訳ないという負い目を背負っての子育てでした。
元気なママを誰よりも赤ちゃんが望んでいることと思います。
出来る限り体調を整えて、赤ちゃんと対面出来る日が来ますように、私も祈ってます。
高橋先生のブログをお借りすることをお許しください。
はなさま
髄液もれと妊娠出産の関連についてコメントいただきまして
ありがとうございます。そして実体験を詳しくおしえてくださいまして、本当に感謝いたしております
お子さんが可愛い盛りに、体調不良だったとの事で、はなさんのコメントを拝読してただただ、涙がとまりませんでした。
私には小さい子供がおります。自分の体調不良のせいで子供にはずいぶん寂しい思いや、十分に世話をしてやれないせいで、
自己嫌悪におちいったり、涙することが、多々あります。
はなさんずいぶんお辛い思いをされたでしょう。
でも少しづつ回復されてらっしゃるようで、本当にうれしく思います。
私は、子供のためにも、兄弟を作ってあげたいです。
第2子を望んでおります。
BP後の出産にかんして情報があまりないので、はなさんからのコメントは、本当に参考になります。
改めてありがとうございました。
髄液漏れと妊娠出産の関連
髄液漏れによる体調不良だと診断されないまま、引っ越しや修学旅行・体育のマラソンなどで激悪化しては少し回復するという十数年を過ごして第一子を妊娠しました。
お腹が目立ち始めた頃にだるさが消えて元気になり、電車で片道二時間半の所に一泊旅行した直後にひと月寝込んでしまいました。が、その間にも胎児が育って硬膜外の圧が更に上がったのでしょう、私はまた復活して無事出産することが出来ました。一時的でも穴が塞がり、漏れが止まったようで、脳脊髄液減少症の症状はありましたが漏れていないというだけでも体は楽になり、少し動ける数年を過ごすことが出来ました。
妊娠するよりずっと以前に髄液漏れを発症し、妊娠によって漏れは塞がったものの髄液が増えないまま体調不良という女性は私以外にもいると思います。
問題が起きたのは夫の海外研修先のシドニーで、理想のお産を求めて第二子妊娠中の安定期でした。第二次世界大戦に関連する反日感情が強かった時で、借家に嫌がらせをされ引っ越しを余儀なくされました。それでも希望の物件に入居出来たことでほっとした瞬間、お腹の中で胎児がズドンと落下して体調は激悪化しました。 次のページへ
赤ちゃんが無事であることだけを願い安静に過ごした結果、胎児が大きくなって硬膜外の圧力が上がったようです、臨月の頃少し遊びに出掛けることが出来ました。産後は疲労感が深く、産後3ヶ月で一軒の家を片付けて帰国した時にはもう一歩も足が前に出ない状況でした。3日間だけ親が手伝いに来てくれました。
新しい生活体制を整えた頃、体調はどうしようもない程悪化しましたが、喘息児と8ヶ月半でトコトコ歩き始めた乳児がいては、寝込むことはひと月が限界でした。
脳脊髄液減少症と診断されたのは、下の子が大学一年の終わり、中学での部活のしごきで故意に転倒させられて陣痛より痛い尻もちを打って35年半が過ぎていました。
4回のブラッドパッチを受けて療養を続けている時に孫が二人誕生、息子家族が度々遊びに来てくれて回復は難渋しました。外見では何も分からないという幸せな新婚夫婦にあがらうのは無駄な抵抗でした。
出産したことを後悔したことなどありません。
髄液が漏れるという発症例を知って貰いたいだけです。
悔しいからこれからもっと元気になって、こころ豊かに生きたいと思うこの頃です。
はな様
コメントありがとうございます。
ふく様のみでなく、多くの女性の方々に参考になる情報です。感謝です!
いつも貴重な情報をありがとうございます。
高橋先生
はなさまより、妊娠出産の件で、貴重なご体験をコメントいただきました。
高橋先生のおかげです。本当にありがとうございます。
ふく様
コメントありがとうございます。
>自分の体調不良のせいで子供にはずいぶん寂しい思いや、十分に世話をしてやれないせいで、自己嫌悪におちいったり、涙することが、多々あります。
心中察する事ができません。しかし、その状況でも出産の事を考えたりされるのは素晴らしいと思います。
希望と、楽しみの心を持っていれば、お子様にもふく様の想いが伝わると思います。
益々の御回復をお祈り申し上げます。