慢性硬膜下血腫合併例の安静方法
- 2016.12.20
- 脳脊髄液減少症
特発性低髄液圧症候群に、しばしば慢性硬膜下血腫が合併します。
これは簡単に言えば、特発性低髄液圧症候群によって脳下垂が生じますが、頭蓋骨自体は変形しないので、脳と骨の間に血がたまるような印象が分かりやすいかと思います。
つまり脳下垂を起こさなければ、慢性硬膜下血腫は拡大しにくくなります。
そのためには安静姿勢として、頭を上げない水平で横になっているのが大切になります。
一方、脳神経外科の臨床においては、脳圧亢進症状、高い髄液圧を治療する場面が圧倒的に多いです。
そのため、ベッド上で頭の位置を高くして、脳圧を少しでも下げるポジションが良く選択されます。
通常の慢性硬膜下血腫で、脳圧亢進が危惧される場合は、やはり頭の位置を上げるポジションが好まれます。
しかし、特発性低髄液圧症候群が原因の場合は、逆効果になり得ます。脳下垂が進み、慢性硬膜下血腫増大につながり得ます。
先日、他院から特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫例で、意識障害が進行し、こん睡状態になった症例の相談を受け、頭を下げて水平状態のポジションを指示しただけで、こん睡状態を脱した症例がありました。
また同院に対して、頭蓋内圧降下作用がある、グリセオールなどの点滴は避けるべきと指示させて頂きました。そして、この症例は、その後にブラッドパッチと手術を要して回復しています。
特発性低髄液圧症候群は、脳神経外科医師が普段遭遇する疾患の逆である低髄液圧治療になるので、時に注意が必要になります。
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