脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

脳脊髄液減少症の歴史 その1

脳脊髄液減少症の歴史 その1

脳脊髄液減少症の疾患の歴史を考えることは非常に重要です。

田村直俊先生が、2012年に発表された論文は、とても良くまとまっており、勉強になっています。

髄液が減少する病態は、腰椎穿刺後に発症するという報告が最初です。腰椎穿刺は1891年にQuinckeによって開発されたが、Quincke自身が穿刺後に頭痛、悪心、嘔吐を訴える症例があることを記述していました。

これらの症状が低髄液圧であるとはじめて明記したのが、1909年、Hosemann です。

1920年にLeriche が脳震盪などの外傷後に生じる病態を、報告しています。同報告では、開頭手術で、硬膜の充血を確認したという記述も含まれます。この硬膜の充血は、現在で言うMRIでの硬膜肥厚所見と思います。

1936年にMahoudeauが開頭手術後低髄液圧の最初の報告をしました。手術の裂け目から脳室内にリンガー液を注入して改善したそうです。

そして自然発生の低髄液圧を呈する病態は、1938年にShaltenbrandにより報告されました。この病態は、臨床症状や髄液所見を詳細に検討し、髄液の産生低下により生じると考察しています。

続く

参考文献

髄液無産生症(Shaltenbrand):忘れ去られた病態生理

田村直俊、光藤尚、中里良彦、山元俊正、荒木信夫

神経内科2012