脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

脳脊髄液減少症の歴史 その2

脳脊髄液減少症の歴史 その2

脳脊髄液減少症を考える上で、髄液研究の歴史を知ることは非常に重要です。

髄液の存在は、古代から うすうす知られていましたが、髄液研究の創始者はフランスのMagendie (1783-1855) と言われています。脳と脊髄周囲に存在する液体を1825年に髄液 (cerebrospinal fluid) と命名しました。

Magendieは、解剖学における第四脳室の正中の出口、Magendie孔の発見で有名です。またMagendieは、水頭症が髄液の過剰の病態と報告しています。そして髄液に関して、軟膜(≑血管周囲腔) 産生説を唱えました。

第四脳室の外側の出口、Luschka孔を発見したLuschkaは、髄液の脈絡叢産生説を唱えました。

肉眼解剖的研究が主流と思われる200年ほど前の時代にもかかわらず、Magendie先生、Luschka先生の説は髄液研究の先見性を持っていました。

貴重な研究結果、知見を当たり前のことと思わず、偉大な先輩研究者方々のご尽力の賜物とありがたく考えていかなくてはいけません。

その上で、脳脊髄液減少症診療改善につなげていきたいと思います。

続く

参考文献

髄液無産生症(Shaltenbrand):忘れ去られた病態生理

田村直俊、光藤尚、中里良彦、山元俊正、荒木信夫

神経内科2012