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脳脊髄液減少症の歴史 その3

脳脊髄液減少症の歴史 その3

髄液研究として、1910年代にWeedは実験動物を使用して、脳脊髄液はくも膜下腔を上行して上矢状洞内に突出する脳くも膜顆粒を介して静脈に回収されるという概念(くも膜顆粒-静脈洞吸収説)を報告しました。

さらに1920年代にCushingは、脳脊髄液は脈絡叢で産生され、脳表のくも膜顆粒から吸収される髄液を「第三循環」と呼び、血液、リンパに続く特殊な循環系があると発表しました。

この概念は100年が経過した現在でも通説として脳脊髄液の吸収首座と多くの教科書に記載されています。

Cushingの発表から約10年後の1938年にShaltenbrandは、自然発生の低髄液圧を呈する病態を報告しました。

報告した3症例は、すべて若年の女性で、

  • 低髄液圧
  • 髄液中のタンパク高値
  • 脊髄ブロック 欠如

を満たしました。

Shaltenbrandは、髄液を少量排除し、髄液圧が排除前に戻るまでの時間を基準に、髄液産生量を推定していました。

低髄液圧症例では、この時間が延長していたので、自然発生の低髄液圧を呈する病態は、髄液の産生低下により生じると考察しました。 

続く

参考文献

髄液無産生症(Shaltenbrand):忘れ去られた病態生理

田村直俊、光藤尚、中里良彦、山元俊正、荒木信夫

神経内科2012