脳脊髄液減少症の歴史 その3
- 2020.09.27
- 脳脊髄液減少症
髄液研究として、1910年代にWeedは実験動物を使用して、脳脊髄液はくも膜下腔を上行して上矢状洞内に突出する脳くも膜顆粒を介して静脈に回収されるという概念(くも膜顆粒-静脈洞吸収説)を報告しました。
さらに1920年代にCushingは、脳脊髄液は脈絡叢で産生され、脳表のくも膜顆粒から吸収される髄液を「第三循環」と呼び、血液、リンパに続く特殊な循環系があると発表しました。
この概念は100年が経過した現在でも通説として脳脊髄液の吸収首座と多くの教科書に記載されています。
Cushingの発表から約10年後の1938年にShaltenbrandは、自然発生の低髄液圧を呈する病態を報告しました。
報告した3症例は、すべて若年の女性で、
- 低髄液圧
- 髄液中のタンパク高値
- 脊髄ブロック 欠如
を満たしました。
Shaltenbrandは、髄液を少量排除し、髄液圧が排除前に戻るまでの時間を基準に、髄液産生量を推定していました。
低髄液圧症例では、この時間が延長していたので、自然発生の低髄液圧を呈する病態は、髄液の産生低下により生じると考察しました。
続く
参考文献
髄液無産生症(Shaltenbrand):忘れ去られた病態生理
田村直俊、光藤尚、中里良彦、山元俊正、荒木信夫
神経内科2012
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第三回 起立不耐症研究会 2020.09.27
中2女児、脳脊髄液減少症疑いのため、
脳槽シンチを行いました。
当日から頭痛と吐き気、翌日は嘔吐もしました。
その後、吐き気はなくなったものの
検査前より明らかに起立性頭痛が酷くなりました。
現在、点滴と安静にしております。
腰椎穿刺の影響でしょうか?
首のあたりから髄液が漏出している所見があると言われ、ブラッドパッチを勧められましたが、
不安です。
改善するでしょうか??
こみゆです様
コメントありがとうございます。
文面のみからの判断は困難ですが、当院での15歳以下の脳脊髄液減少症に対するブラッドパッチの有効率は90%です。
お嬢様のご回復を心よりお祈り申し上げます。