脳脊髄液減少症の歴史 その4
- 2020.10.24
- 脳脊髄液減少症
Weed、Cushingの報告により、髄液は脈絡叢で産生され、側脳室→第三脳室→第四脳室→脳表くも膜下腔→上矢状洞付近のくも膜顆粒から吸収される「第三循環」が、髄液動態の通説となり、現在も多くの教科書に記載されています。
しかし、重力に逆らっての液体の循環には、弁、またはポンプ機能が重要であるが、髄液が存在する部位には、そのような機能を要する構造が存在しません。
また脳神経外科手術中に、上矢状洞付近に髄液が循環するような所見を認めることはありません。
さらに物理的に排水口が閉塞した場合、排水口の直前が拡大しますが、上矢状洞が閉塞する硬膜静脈洞瘻や静脈洞血栓症という病態で、くも膜下腔や脳室拡大は認めらません。
そもそも人の乳児や、多くの動物には、くも膜果粒自体が存在しません。
これらの知見から、1970年代頃より、通説に関して、懐疑的な考えが出始めました。
続く
参考文献
髄液無産生症(Shaltenbrand):忘れ去られた病態生理
田村直俊、光藤尚、中里良彦、山元俊正、荒木信夫
神経内科2012
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