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脳脊髄液減少症の歴史 その5

脳脊髄液減少症の歴史 その5

脳脊髄液研究において、髄液産生についても、重要な問題です。

髄液産生部位に関しては、100年以上前から脈絡叢と、くも膜下腔の血管周囲腔の二元産生説が指摘されています。

脈絡叢に関すれば、自律神経支配は、交感・副交感の二重支配を受けています。

そして交感神経切除で髄液産生が一過性に上昇し、交感神経で減少することが報告されました。

自律神経作動薬の効果については一致した結論がありませんが、副交感神経は、髄液産生の効果があると1970年代にLindvallらが報告しています。

脳脊髄液減少症の歴史その3

で述べましたが、Shaltenbrandは、髄液を少量排除し、髄液圧が排除前に戻るまでの時間を基準に、髄液産生量を推定していました。この方法は、簡易的な測定法であり、厳密に髄液産生を測定しているわけではありません。

また1960年代、Pappenheimerらが、髄液産生を測定する方法として、脳脊髄液環流法を考案しました。

しかし、この方法は、髄液の一元産生説に基づいており、新規の髄液産生量を反映していません。

近年、髄液産生の自律神経支配について論じた原著論文がありませんが、これは髄液産生量を厳密に測定する方法がないからと言われています。

続く

参考文献

髄液無産生症(Shaltenbrand):忘れ去られた病態生理

田村直俊、光藤尚、中里良彦、山元俊正、荒木信夫

神経内科2012