脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

重症を診るという事は

重症を診るという事は

院内感染が問題になっています。

帝京大学に関しては、報告の遅れという問題は考慮すべきですが、重症患者の診察をする上では、一定の割合で、院内感染は発症し得ますので、重症患者の診療を行っている病院として、必ずしもすべてが悪いとは思いません。

問題は院内感染の対策を取っているかどうかが重要と考えています。おそらく、重症患者を受け入れている病院は何らかの院内感染対策を講じて、実践していると思います。


思い出すのは、大学に所属していた頃、脳幹梗塞という重い病気を発病された男性の治療を担当しました。

発病当初から、意識障害、呼吸障害を合併しており、数日後に肺炎を患いました。抗生剤投与で何とか状態が安定したものの、入院数週後に男性の喀痰から多剤耐性ブドウ球菌 MRSAが検出されました。そして、病院による院内感染対策にのっとり対処を行い、家族に連絡をしました。

すると数日後、いきなり某役人が来院され、状況の説明を求められました。男性の家族からの要請との事でした。

この男性の場合、入院時に多剤耐性でなく感受性のあるブドウ球菌が検出されていました。それが、肺炎の治療のために使用した抗生剤によって変化し、MRSAになりました。つまり元々、男性の体内に存在していた菌が抗生剤投与により形を変えたのであって、他の患者からの感染ではありません。

同時に、大学での院内感染対策を説明し、役人に納得して帰って頂きました。

しかし、こういった事があると、精神的にも肉体的にも大きく疲労し、男性の家族との関係も悪化しました。

院内感染=医療機関が悪い!では、必ずしもありません。

まずは担当医師からの状況説明を受ける事が大切でしょう。


重症な病状の方は免疫が低下していますので、健常な方が発病し得ない弱毒菌での感染がどうしても生じます。

院内感染以外にも合併症が生じ得ます。ゆえに重症患者の治療は、難治になる事が少なくありません。

そのような厳しい状況で勤務されている医師達の減少に歯止めをかけるためにも、重症を診るという状況を理解頂けたらと思います。