突発性正常圧水頭症について
- 2008.12.01
- 特発性正常圧水頭症
治る認知症、治る歩行障害として、注目されつつある疾患です。本症は、高齢者に好発し、痴呆、歩行障害、尿失禁などを呈します。先行疾患がなく、ゆっくり進んでいく病気です。
特発性正常圧水頭症の病態は、脳脊髄液の循環障害により、脳室に髄液が過剰にたまることにより生じます。歩行障害で発症する事が多く、歩幅が狭くなる、一歩目を踏み出せなくなる、足が上がらずにすり足になってしまうなどの特徴があります。
本症の場合、髄液を脳室外に流しだすことで、障害された脳の機能を戻す手術、髄液シャント術により、歩行障害の改善率は90%以上、認知症、尿失禁の改善率は50%前後といわれています。
現在、特発性正常圧水頭症は認知症患者の5%を占めているといわれています。しかし本症はまだ認知度が低く、脳萎縮や脳梗塞などと診断され、治療が施されない症例も散見します。中高齢者の原因不明の歩行障害、認知症、尿失禁のいずれか、またはその組み合わせの症状がみられたら、年齢のせいとあきらめないで、特発性正常圧水頭症を疑ってみることをお薦めします。
症例
75歳女性。某年2月、歩行障害が出現、徐々に進行し、自力での起立が不能となった。さらに尿失禁、痴呆が出現した。数ヵ所の病院を受診したが、年齢の影響と診断され、半年程、経過観察されていた。
家族が、これらの症状は水頭症でないかと疑い、当時私の所属していた病院を受診、特発性水頭症の診断で手術を施行した。術後、歩行障害、尿失禁、痴呆は改善し、経過良好にて退院した。
(本症例のご提示においては患者様ご家族の了解を得ております)
手術前後の様子を以下の動画でご覧いただけます。音が出ますのでご注意ください。
■手術前
■手術後
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