脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

意外に知られていない水頭症

意外に知られていない水頭症
T.Fさん(24歳、男性)、ボクサー

 ある日、スパーリング中に頭部を強打し、某病院にて急性硬膜下血腫、脳挫傷の診断で緊急手術を受け、一時期、生死をさまよいました。が、その病院での適切な治療により、救命できました。

 しかし、その後は意識障害が持続し、右半身の麻痺も後遺しました。Yes, Noの意思表示はできますが、言葉は全く発しない状態で1年が経過しました。

ある方から依頼を受け、T.Fさんを拝見させて頂きました。

MRIをみると、脳挫傷瘢痕、脳梗塞、脳萎縮が目立ち、一見、後遺症は継続するのではと思いました。 が、その中に脳室という髄液がたまる脳の部屋が拡大している所見をみとめました。

脳室拡大がある場合、原因として①脳萎縮②水頭症 が考えられます。

脳萎縮の合併は間違いなく存在しますが、水頭症の要因があれば、少しでも症状が改善するかもしれません。

私の考えを御家族に伝え、髄液を排除する検査をしてみました。すると、直後から、「ドレミの歌」を歌い始めました。1年間、全く言葉を発しなかった状態からの変化に、希望が生まれました。

数日後に、髄液を排除する手術(腰椎ー腹腔シャント術)を施行しました。

 術後、女性職員に

 「ダセー!」「ウゼー!」

などの発語が見られ、その後、少しずつ様々な会話が増え、喜怒哀楽の感情を示すようになりました。1年間、言葉を発する事がなかっただけに、術後の変化に御家族は大変、喜ばれました。

状態が安定し、手術数週後に転院されましたが、転院の際にはT.Fさんから笑顔で

「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・し・た!」

と御丁寧な挨拶を頂きました。

右半身麻痺などのハンディキャップがあり、本人、御家族の苦労は大変なものがありますが、是非、今後も頑張って頂きたいと思います。

同時に、脳脊髄液減少症のみならず、髄液循環障害の代表的な疾患、水頭症もまだまだ、認知度が低いと再認識しました。