メンタル・トレーニングの効果
- 2009.03.21
- メンタルトレーニング 特発性正常圧水頭症
T.Sさん(88歳、男性)
数ヶ月の間に進行する意識障害、歩行障害などを主訴に私の外来を受診されました。
受診時、「無動、無言」状態、いわゆる動かず、喋らずでした。 画像所見を見ると、脳内の髄液がたまる部屋、脳室の拡大を認めました。
水頭症の可能性を検査するため、髄液を排除すると、直後に言葉を発します。しかし、数時間で、また元の状態に戻ります。 2回ほど、髄液排除を行いましたが、同様な結果でした。
御家族と今後の方針を相談させて頂き、
- 手術
- 髄液排除を繰り返す
- 経過観察
の選択肢が挙げられました。
問題は88歳という年齢です。麻酔一つにしても危険があります。 相談の末、家族が手術を希望されたため、先日、手術を行いました。
手術室に入室し、麻酔を導入すると、いきなり血圧が50mmHgに低下しました。昇圧剤投与にも反応しません。尿もでません。麻酔科医師は明らかに動揺しています。
私は冷静に麻酔科医を信用し、状態が安定するのを待ちました。 30-40分位たつとようやく、血圧が上がってきたため、手術を開始しました。
手術は順調に進みましたが、手術中に呼吸器が外れるなど、予想外の事態も起きました。 しかし、私は常に冷静を保てました。 常に冷静を保てたのは、メンタル・トレーニングを勉強させて頂いた効果と思います。
手術が終了し、麻酔からも覚め、家族と面談した時、 奥様の「お父さん、大丈夫?」 の問いに、 「うん!」としっかり答えたT.Sさん。これを見た奥様、お嬢様は、涙を浮かべました。
この光景を見ただけで、全てが報われた気分になります。
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