脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

対⼈⼼理学の視点を どう活かすか

対⼈⼼理学の視点を どう活かすか

先日、第12回 線維性筋痛症東京フォーラムに参加させて頂きました。

日本⼤学⽂理学部坂本真⼠教授より 

「線維筋痛症の理解と治療に 対⼈⼼理学の視点を どう活かすか」

 という非常に興味深い講演を頂きました。 

線維性筋痛症は、慢性の疼痛を特徴とする疾患です。 

慢性疼痛に対して、通常の疼痛治療に加えて、⾃⼰呈⽰Self presentationを追加したプログラム を実施した研究を紹介頂きました。 

その結果、positiveな⾃⼰呈⽰を公的に⾏った者は、同様の⾃⼰呈⽰を私的に⾏った者や、negativeな⾃⼰呈⽰した者に⽐べて、良好な介⼊結果を⽰したそうです。 

慢性の疼痛に悩みながらも、 

「OOという目標を持って、地道に頑張ってきた結果、以前に比べて、できることが増えてきた。ただ、まだ目標には届いていないので、課題を少しずつ克服して、目標達成できるよう頑張っていきたい!」 

というようなpositiveな自己提示を公に示した症例は、 

「私は慢性の疼痛で、非常に辛い。加えて、OOのような症状もあります。」

「目標を持って頑張ってはいますが、この症状では何もできません。」

と、弱い点を主張するnegativeな自己提示を公に示した症例より、良好な介入結果を示したそうです。 

脳脊髄液減少症に悩む方々、negativeな自己提示をされる気持ちもわかります。

個人的な意見ですが、negativeな自己提示をすることで少しでも気持ちが落ち着くのであれば、して良いと思います。むしろ大切になることもあるでしょう。 

ただ、negativeな状態の中に、同時にpositiveな自己提示を少しだけでも考えられると、回復の力になるのではないかと思います。  

実際に、脳脊髄液減少症患者の中でも、明確な目標があって、それに対して一進一退あっても、進んでいく症例に回復される方が多い印象です。

 また、同じ脳脊髄液減少症患者同士で

 「私はこんなことして、良くなっていたんだよ!」  

脳脊髄液減少症患者としての後輩に対して、 「昔はあなたみたいにしんどかったけれど、あんなこと、こんなことして良くなってきているから。」

 のような話をしているうちに改善してきた方々もいました。  

これらもpositiveな自己提示のひとつの表れだと思います。 

非常に貴重な講演と感じました。 


Positiveは大切ですけれど、人間って誰もが弱い存在です。辛い状況で何が何でもpositiveだと、かえって体を壊します。しんどい時は泣いても、弱音を吐いても良いと思います。 一人でできることには限界があるので、周囲の協力も大切でしょう。  

ただ、negative一辺倒になるのでなく、少しでもpositiveを意識できると、回復に近づけると思います。