子宮頸がん予防ワクチン
第16回 日本脳脊髄液減少症研究会
二つの演題を発表しましたが、一つは
「HPVワクチン関連免疫異常症候群に髄液異常の合併が疑われた4例」
です。
子宮頸がんなどの予防ワクチンであるHPVワクチン接種後に、頭痛などの多彩な症状を訴える方々がいます。
多彩な症状は脳脊髄液減少症に似ているのではないかとの依頼を頂き、現在、様々な事を考えさせて頂いています。
今回は4例のみですが、発表してきました。
大きな問題なので、発表後、それから研究会終了後にも多くの質問、御意見を賜りました。
以下、演題抄録です。
目的
HPVワクチン関連免疫異常症候群HANSと診断され、ブラッドパッチ、もしくは生食パッチを施行して効果を認めた4例を報告する。
結果
対象は東京慈恵会医科大学神経内科にてHANSと診断された16-19歳の4例である。症状は、強固な頭痛に加え、不随意運動、失神発作、生理痛、めまい、嘔気、倦怠感 、光覚過敏、聴覚過敏、筋力低下など多彩で、全例著しく日常生活に支障を来していた。RI脳槽シンチでは、4例中3例でRI残存率が20%以下であった。CTミエロでは、4例中2例に髄液漏出像を認めた。3例にブラッドパッチ、1例に生食パッチを行い、全例、何らかの効果を認めた。しかし、完治症例、著明改善例は現在の所、存在していない。
考案
HANSは、HPVワクチン接種後に疼痛性障害、疲労、生理異常、自律神経障害、ナルコレプシー、光覚過敏、聴覚過敏、高次機能障害などを呈する、既存の疾患概念にない新規病態として、2014年にNishiokaらによって提起された。責任病巣として、視床下部の病変を核とした神経機能障害が提唱されているが、HANSによる症状の多彩性、複雑性に関して不明な点が多く残されている。治療としてリリカ、ノイロトロピンなどの内服療法に加え、血液浄化療法、ステロイドパルス療法、免疫吸着療法が有効との報告があるが、確立されたものは存在しない。今回提示する、脳脊髄液減少症に対する治療が部分的に効果を示した4例の存在は、HANSの多彩な症状に、髄液異常が合併している可能性を示唆させる。複雑な疾患であるため、脳脊髄液単独の異常とは考えていないが、他療法を併用することで、治療成績向上につながる可能性がある。
結論
HANSに髄液異常の合併が疑われた4例を報告した。HANSの病態、および不明な点が多い髄液の機能について新たな知見が得られる可能性があり、さらなる検討が必要と考えられた。
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HPVワクチンの接種については一時期かなり話題になりましたね。マスコミの力は良くも悪くも大きいですね。娘もちょうどワクチンの始まりかけた時期だったのでよく記憶しております。娘は接種しませんでしたが。
ワクチン接種のその時から多彩な症状が現れ生活が一変、手探りの中ても脳脊髄液減少症の治療の一つが高橋先生の研究のよって何らかの変化を示したことは患者様ご家族にとられては大きな光となったことと思います。
りんりん様
コメントありがとうございます。
HPVワクチン後遺症に関しては、問題が山積みで、脳脊髄液減少症の比ではないと感じています。
それでも少しでも私ができる事を考えて、行っていきたいです。
高橋浩一 先生
目下の医療訴訟で、最も注目を集めているものの一つが「子宮頸がんワクチン」の問題だと思います。
思春期の女子が関係しているので、私の身の回りにも直接の関係者が多くいます。
感情論や製薬業界の利潤の観点ではない、医学的な解明を一日でも早くお願いいたします。
あきちゃんで~す様
コメントありがとうございます。
まさしくです。問題の大きさとしては脳脊髄液減少症以上ではないでしょうか?
私は目の前の症例をいかに良くしていくか!を考えることに専念したいです。