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特発性低髄液圧症候群の糖鎖バイオマーカー

特発性低髄液圧症候群の糖鎖バイオマーカー

第15回 日本脳脊髄液減少症研究会

髄液研究の最前線

「特発性低髄液圧症候群の糖鎖バイオマーカー 」

福島県立医大生化学教室 橋本康弘教授から発表頂きました。

分泌タンパク質の多くは、細胞内で糖鎖という糖がつながり合った構造が付加された後に細胞外に分泌されます。

物質の糖鎖という部分に注目すると、 糖鎖修飾という現象は細胞種に特異的です。

トランスフェリンという物質の糖鎖の部分に注目すると、産生部位が髄液なのか、それ以外なのか区別がつきます。

髄液産生型トランスフェリンの存在は、その液体が髄液由来である証明になります。

このトランスフェリンは、特発性正常圧水頭症では減少し、特発性低髄液圧症候群では上昇します。

特発性正常圧水頭症では、髄液産生が減少することが報告されており、髄液型トランスフェリンの減少はこれに対応する現象と考えられています。

 一方、特発性低髄液圧症候群における髄液型トランスフェリンの増加は、髄液の喪失に伴う2次的な髄液産生の亢進を示していると考えられます。

この仮説が正しければ、トランスフェリンは髄液産生のマーカーとなり得ます。

不明な点が多い髄液の産生、吸収の機序解明に大きなヒントを与えてくれる可能性があります。

すでに福島県立医大生化学教室とは、共同で研究をさせて頂いていますが、本研究会を通じて新たなアイデアが出ており、次なる研究企画が進行しています。