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慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群

慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群

日本脳神経外科学会 第73回 学術集会

一般口演 「脳脊髄液減少症」

慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群76例の画像所見 ― 慢性硬膜下血腫非合併例との比較検討

質問としては、

「慢性硬膜下血腫を合併した症例の髄液圧は?」

など、建設的なものでした。

ちなみに、この質問に対する回答は、

「ほとんどが正常圧、もしくは低髄液圧で、高圧(20cmH2O以上)は76例中1例のみです。」

なので、低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫の治療方針としてはブラッドパッチ先行が望ましいと、現段階では考えています。

演題の抄録です。


【目的】
慢性硬膜下血腫 (CSH) を合併した特発性低髄液圧症候群 (SIH) (CSH+群)76例において、CSHを伴わないSIH症例 (CSH-群)とRI脳槽シンチ、およびCTミエロ所見について比較検討し、臨床像について検討した。

【対象】
2006年から2014年5月にSIHと診断した216例である。このうちCSH-群48例、CSH+群40例にRI脳槽シンチを施行した。さらにCSH-群の10例、CSH+群13例にRI脳槽シンチ、CTミエロを同時に施行した。

【結果】
CSH-群138例、 (男性44例、女性94例、平均年齢38.8歳)に対し、CSH+群は76例(35.5%, 男性48例、女性28例、平均年齢47.8歳)であった。RI脳槽シンチのみを施行した症例の髄液漏出像陽性率はCSH-群では85.4%、CSH+群90.7%であった。一方、RI脳槽シンチ、CTミエロを同時に施行した症例ではCSH-群100%、CSH+群92.3%に髄液漏出像が認められた。RI残存率(24時間後)は、CSH-群では、平均8.9%、CSH+群は、平均6.8%で、CSH-群で、やや高値であった。

【考案】
CSH+群の治療法として、血腫洗浄術を先行した場合、再発や治療が追加になる可能性が高く、周術期合併症を認める場合もあるため、保存的加療が有効でない場合はブラッドパッチを先行すべきと考えている。その際、ブラッドパッチを適切に行う必要があるために、髄液漏出を確実に診断する必要がある。RI脳槽シンチは、経時的な髄液動態の把握に加え、RI残存率を定量的に評価できる。またCTミエロはRI脳槽シンチよりも空間分解能にすぐれており、髄液漏出が鋭敏に描出される。一方で硬膜外への髄液漏出が病的か正常範囲か判断に迷う症例も存在する。両者を同時に行う事で、解剖学的な髄液漏出の状態、および髄液漏出の程度が把握でき、ブラッドパッチを行う上でとても有用な検査となる。

【結論】
CSHを合併したSIHは適切な治療により、予後が良好である。治療法は保存的加療にて効果が乏しい場合はブラッドパッチを先行すべきであるが、その際に、RI脳槽シンチおよびCTミエロを同時に施行する事で、髄液漏出の状態、および程度が的確に把握でき、非常に有用な検査と考えている。