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小児期に発症した脳脊髄液減少症87例の検討

小児期に発症した脳脊髄液減少症87例の検討

小児期に発症した脳脊髄液減少症87例の検討
-治療予後と問題点-

Eighty seven cases of Cerebrospianl fluid hypovolemia in childhood and adolescence: outcome and clinical features

高橋 浩一 山王病院脳神経外科
Koichi Takahashi Department of Neurosurgery, Sannou Hospital

目的

小児期に発症した脳脊髄液減少症について治療予後について検討し、臨床像、および現状の問題点を考察した。

対象と方法

対象は、15歳以下に脳脊髄液減少症を発症し、発症から5年以内にブラッドパッチを施行した87例(男性44例、女性43例、平均年齢13.3歳)である。

結果

ブラッドパッチ治療前は、欠席せずに通学できる症例(Grade 1)は5例 (5.7%)、症状のため、通学できる日が限られる症例 (Grade 2) が41例 (47.1%) 、通学不能症例 (Grade 3) が18例 (20.7%) 、ほとんど寝たきり状態 (Grade 4) が23例 (26.4%) であった。これがブラッドパッチ後には、Grade 1が、47例 (54.0%)、Grade 2が、34例 (39.1%)と、9割以上が、就学可能な状態に改善した。一方で、Grade 3が5例 (5.7%)、Grade 4 が1例 (1.1%) と、難治例も存在している。治療予後は著明改善が68例(78.2%)、軽度改善が15例(17.2%)、不変4例(4.6%)と、9割以上に何らかの効果を認め、成人例(有効率75%)と比較し良好な治療予後であった。ブラッドパッチ平均回数は小児期発症例において1.9回であり、成人例の2.2回と比し少数回数の傾向があった。

考案

小児期発症の脳脊髄液減少症において、ブラッドパッチは成人例より予後が良好で有効な治療法である。しかし本症の認知不足や、治療可能な医療機関が極端に少ない事により、精神疾患や起立性調節障害など、他の診断で経過観察されている症例が少なくない。また、昨年より一部医療機関でブラッドパッチが先進医療に認められたが、適用症例が、ごく一部に限られるなどの問題も存在する。

結論

脳脊髄液減少症小児例において、ブラッドパッチは有効な治療法である。しかし、診断に至らない症例や、難治症例も存在する。本症の認知度上昇とともに、治療成績向上のため、さらなる検討が必要である。