外傷により発症した学童期脳脊髄液減少症
- 2013.06.11
- 学会・講演・論文

外傷により発症した学童期脳脊髄液減少症
-32例における臨床検討―
Traumatic cerebrospianl fluid hypovolemia in childhood and adolescence. Analysis of 32 cases and clinical features
高橋 浩一 山王病院脳神経外科
Koichi Takahashi Department of Neurosurgery, Sannou Hospital
目的
学童期に外傷が原因で発症した脳脊髄液減少症について検討し、治療法、臨床像など考察した。
対象と方法
対象は、15歳以下に脳脊髄液減少症を発症し、発症から5年以内にブラッドパッチを施行した87例中、明らかな外傷がきっかけで30日以内に症状が出現し、外傷が原因と考えられた32例(男性15例、女性17例、平均年齢12.8歳)である。
結果
原因としては交通事故が12例 (37.5%)、部活動や体育の授業など、学校内での受傷が12例(37.5%)であった。受傷部位は、頭部、頚部、背部または腰部打撲がほとんどで、受傷から症状発現までの時間は、受傷直後から30日 (平均5.6日) であった。治療は、保存的加療が効果的でない場合にブラッドパッチを施行した(平均治療回数1.6回)。予後は改善が27例 (84.4%)、部分改善が5例 (15.6%) と、全例に何らかの効果を認めた。学童期発症の非外傷性脳脊髄液減少症同様、良好な治療予後であった。
考案
外傷性脳脊髄液減少症の特徴は、何らかの外傷後に起立性頭痛や、めまい倦怠感などが出現し持続するが、通常、頭部MRIなどの諸検査にて異常を認めない。経過、症状から脳脊髄液減少症が疑われた症例では、確定診断に至らなくても、特に発症早期には安静、点滴などの保存的治療で治癒する事が少なくない。また、保存的治療での効果が乏しい症例に対しては、ブラッドパッチが有効である。しかし、脳脊髄液減少症の認知度が低いため、外傷性頚部症候群や精神疾患など、他の疾病と判断され、経過観察されている症例が稀でない。
結論
外傷により発症した学童期脳脊髄液減少症は、発症早期には保存的治療での効果が高い。それからブラッドパッチも有効な治療法である。何らかの外傷後に起立性頭痛などが出現し、持続した場合には、脳脊髄液減少症を念頭に入れ、早期の対応が重要である。
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高橋浩一 先生
論文中の「脳脊髄液減少症を念頭に入れ」というところがすべてのDrの常識になれば、「精神疾患」などという誤診?も、ずいぶん減りますよね。
私は、頭痛を訴える生徒の話を聞くとき、いつも本症のことを念頭におくようにはなりました。
あきちゃんで~す様
コメントありがとうございます。
本当ですね!
学会でも、批判的な意見は年々、少なくなっているように感じています。
高橋先生
蒸し暑いですね。毎日気を付けてはいるんですが、やはりこの季節はつらいです。
今年は、梅ジュースを作ってみました。漬けてから1週間で出来上がります。クエン酸はとても体に良いので、この夏は梅ジュースで
乗り切りたいです。
高橋先生の患者さんも、いくら回復されたかたでも、この季節は
体調不良に陥ることがあるのではありませんか?
高橋先生も夏バテにお気をつけください。
ふく様
コメントありがとうございます。
梅ジュース、体に良さそうですね!
私は「さらりとした梅酒」で、夏を乗り越えようかと・・・
猛暑は、水分補給に加え、塩分の補給も大切です。クエン酸も補給してみます。
高橋先生
「精神疾患」などと誤診されると本当に辛いだろうと想像出来ません。誤診されたら、逆に本当に心がおかしくなりそうです。
心は元気なのに体がおかしい!と患者本人には明らかなのに。。。
もちろん、周囲の誤解、病の辛さから、二次的に心が疲れてしまうというのは多々あると思います。
しかし、元凶は体の病であると考えます。
外傷により硬膜が破れるのは稀ではなく、外傷により精神疾患になるのが稀であろうに、と思ってしまうのは私だけでしょうか。
外傷直後、損傷により体がぐったりして動けなかったときであってもすぐ治るだろうとけろっとしていた私としては、そんなふうに思います。
話は変わりますが、ふくさんの梅ジュース、良いですね♪
クエン酸は疲れが取れますよね。
8様
コメントありがとうございます。
>心は元気なのに体がおかしい!と患者本人には明らかなのに。。。
先日の元野勝広さんの話を思い出します。
認知が大切ですね!
梅ジュース飲んで頑張りましょう!