脳萎縮との鑑別が困難であった正常圧水頭症の2例
- 2013.02.10
- 学会・講演・論文
第14回 日本正常圧水頭症学会
以下の演題で発表してきました。抄録を添えます。
脳萎縮との鑑別が困難であった正常圧水頭症の2例
目的
今回、広範な脳梗塞、および脳挫傷後に脳室拡大を呈し、他院にて脳萎縮と判断されていたが、その後の精査にて正常圧水頭症と診断し、腰椎―腹腔シャントが効果を示した症例を経験したので報告する。
症例1
49歳、男性。意識障害、左片麻痺にて発症、右中大脳動脈領域に脳梗塞を認めた。その後に右前大脳動脈領域にも脳梗塞を発症し、左片麻痺に加え、意識状態は反応に乏しく、ほとんど床上の状態となった。脳梗塞発症2年後に当院を受診、脳梗塞に伴う脳萎縮、脳室拡大を認めた。髄液排除を施行した所、直後より意識状態などの改善など認めた。腰椎―腹腔シャントを施行、術後、意識状態、運動機能など改善した。
症例2
25歳、男性、プロボクサー。スパーリングで強打を受けた後、昏睡となり近医を受診、急性硬膜下血腫、脳挫傷を認め、緊急で血腫除去術を施行された。その後、右片麻痺で、ほとんど床上の状態で安定した。受傷1年後に当院受診。来院時、脳挫傷後遺症による広範な脳障害、脳萎縮、脳室拡大を認めた。髄液排除を施行した所、直後より意識状態の改善を認めた。その後に腰椎―腹腔シャントを施行、意識状態、運動機能など改善した。
考案
広範な脳損傷後に脳室が拡大した症例の多くは、脳萎縮に伴った結果と判断されがちである。しかし、上記2症例のように画像上、脳損傷が主な所見であっても、脳室拡大がiNPH様であった場合は、水頭症病態が併存している可能性があり、髄液排除試験などを考慮すべきである。
結論
脳萎縮との鑑別が困難であった正常圧水頭症の2例を報告した。脳萎縮が顕著で脳室拡大を呈する症例の中にも、髄液シャント術が有効な症例が存在する。特に若年症例では、正常圧水頭症の存在を念頭に精査を検討すべきである。
NPH:特発性正常圧水頭症
提示した2症例は、ともに自発開眼はあるものの、反応がほとんどなく、寝たきりの状態でした。
前医では、「もう、治療のやりようがない!このまま様子見るしかない!」との判断でした。
すべての寝たきり状態の症例が有効であるわけではありませんが、効果の可能性を踏まえ、対応を考慮すべきと考えています。
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