脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

抄録

抄録
背景:

脳脊髄液減少症は徐々に認知されているものの、小児症例に言及した報告は少ない。今回、我々は小児期、学童期に発症した脳脊髄液減少症50例について、予後、臨床像について検討した。

方法:

対象は15歳以下に脳脊髄液減少症を発症した50例(男性25例、女性25例)である。診断は、臨床症状、MRI、RI脳槽シンチにて行った。治療は、これら50例全例にブラッドパッチを施行した。

結果:

症状としては難知性の頭痛、頚部通、めまい、倦怠感、耳鳴り、視覚異常などで、これら症状は従来の治療法では効果が乏しい。

頭部MRIでは28例 (56.0%) が異常所見を示さなかった。

 RI脳槽シンチでは、16例 (32.0%) に髄液漏出像を認め、他の34例 (68.0%) は、膀胱内早期集積にて診断した。

約90%の症例がブラッドパッチにて症状が軽快した。特に発症から治療までの期間が1年以内の症例では96.0%が改善、もしくは部分改善を示した。

結論:

脳脊髄液減少症、特に小児期、学童期発症例の認知度は低い。

自律神経失調、起立性調節障害、バレリュー症候群、うつ病などと診断されている児童も存在する。

今回の検討では、若年発症の脳脊髄液減少症症例に対してブラッドパッチの有効性が示唆された。

難知性の起立性頭痛などに苦しんでいる児童がいた場合、脳脊髄液減少症の可能性を考慮すべきである。