脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

日本脳神経外科学会 第70回学術総会

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シンポジウム17 脳脊髄液減少症 「小児期に発症した脳脊髄液減少症56例の検討 -病態と治療法-」発表させて頂きました。

以下、発表演題の抄録です。


小児期に発症した脳脊髄液減少症56例の検討 -病態と治療法-

Fifty six cases of cerebrospianl fluid hypovolemia in childhood and adolescence: Clinical features and treatment modalities

山王病院脳神経外科 高橋 浩一
Koichi Takahashi Department of Neurosurgery, Sannou Hospital

 目的

小児期に発症した脳脊髄液減少症の病態および治療法に関して検討した。

対象と方法

対象は、15歳以下に脳脊髄液減少症を発症し、発症から5年以内にブラッドパッチを施行した56例(男性32例、女性24例、平均年齢13.5歳)である。これらの症例について、脳脊髄液減少症の病態、ブラッドパッチの方法、回数、治療予後に関して成人例と比較検討した。

結果

56例中、ブラッドパッチ治療回数は、1回が22例 (39.3%)、2回が22例 (39.3%)、3回が11例 (19.6%) 、4回が1例(1.8%)であった。5回以上を要した症例は存在せず、平均ブラッドパッチ回数は1.8回であった。成人例の平均ブラッドパッチ回数は2.2回であり、成人と比し少数回数の傾向があった。治療予後は改善が39例(69.6%)、部分改善が13例(23.2%)、不変4例(7.1%)であった。成人例の治療有効率は76.3%であり、成人例と比較し治療成績は良好であった。複数回のブラッドパッチを要した症例は、効果が不十分であった症例が16例、症状が再発した症例が16例、効果を示さない症例が4例であった。

考案

脳脊髄液減少症小児例においてブラッドパッチの治療回数は、成人に比較し少ない回数で改善を得る事が多い。また症状が再発しても、ブラッドパッチの追加により、軽快する症例が多く存在した。脳脊髄液減少症は認知度が低く、診断に至らずに起立性調節障害などの診断にて経過観察されている症例が多い。しかし、ブラッドパッチは小児期発症の脳脊髄液減少症に対して9割以上に何らかの改善を示す有効な治療法である。難治性の起立性頭痛などにより日常生活に支障を来たしている症例に対しては、脳脊髄液減少症を鑑別診断として考慮すべきと思われた。

結論

脳脊髄液減少症小児例に対する治療法として、ブラッドパッチが有効である。ブラッドパッチは成人に比較し、少数回数で効果を示す傾向があった。