CSF Research
- 2009.06.17
- 学会・講演・論文
以下の論文が、先日採用されました。
Cerebrospinal fluidとは髄液の事です。略してCSFと言います。
Cerebrospinal fluid leakage after radioisotope cisternography is not influenced by needle size at lumbar puncture in patients with intracranial hypotension.
Koichi Takahashi and Tatsuo Mima Cerebrospinal Fluid Research 2009, 6:5 (27 May 2009)
http://www.cerebrospinalfluidresearch.com/content/6/1/5
簡単に解説しますと、RI脳槽シンチで、特に膀胱内早期集積や残存率低下などの間接所見は、穿刺した際の、針穴からの漏れが原因でないかととの指摘を受ける事があります。
そこで、脳脊髄液減少症が疑われた方々を対象に、腰椎穿刺の際の針の太さを22G, 23G, 25Gと異なるサイズで行い、RI脳槽シンチ所見に差が生じるか検討しました。
同時に、穿刺後頭痛の頻度、程度を検索しました。
結果は22Gが、23G, 25Gに比べややRI残存率が低い傾向にありましたが、統計学的有意差を認めませんでした。
穿刺後頭痛は、25G群で発生頻度は低かったですが、これも統計学的有意差を認めませんでした。
RI残存率と穿刺後頭痛の関係は、RI残存率の低い方に、強い穿刺後頭痛が生じる傾向がありました。
結論:
脳脊髄液減少症の診断に際し、22G, 23G, 25Gを使用してのRI脳槽シンチでは、その所見に差を認めなかった。
髄液穿刺に伴う針穴からの髄液の漏出は、診断上、無視できる程度と考えられた。
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お疲れ様です。
臨床に基づいた素晴らしい論文の発表をありがとうございます。
何十年も前の外国の論文や医薬情報の一部の都合のいい部分のみを引用し、机上の空論であたかも針穴からの漏れを減少症の要因であるかのようにのたまう医師もいますが、それと比較し、非常に説得力があると思います。(比較する事自体、失礼かもしれませんが)
今後、研究施設の整った大学病院からも、このような試みが行われ、どんどん発表していただきたいものです。
yuuki様
小生の論文をお褒め頂き、ありがとうございます。
本論文は、日本では評価が低く、不採用となりましたが、CSF researchの編集長は、一時期、投稿自体をあきらめかけた私達に、「この論文は発表すべきであり、頑張っていくつかの問題点を訂正の上、再提出しなさい!」との励ましを賜り、採用に至りました。
CSF research関係者の方々、それから美馬部長をはじめ御指導頂いた方々に本当に感謝しています。
それから本論文中でも述べていますが、脳脊髄液減少症の方々は従来の報告に比べ、髄液穿刺後頭痛の発生頻度が高率です。
お返事いただきありがとうございます。
当方の認識では、元々漏れなどにより髄液が少ない状態にあった方は、通常では起こっても稀であるゲージ数の高い針での穿刺による穿刺後頭痛の発生頻度が高率であるというのは、寧ろ当然の事だと思っています。元々髄液が少ないわけですから。
特にRIに関しては、元々症状があったから検査をしたはずなので、穿刺後頭痛の発生や悪化=脳脊髄液減少症になったという構図は当方には考えにくいです。(誤穿刺等はまた別の問題かと思います)
穿刺後の注意等を十分認識されている施設では、特にそういう事は起こりにくいと思います。
加えて、仮にその穿刺が脳脊髄液減少症の発症原因ならば、ピンポイントでEBPを行えば、改善されるという理屈になる気がします。
ましてや、画像上で確認できる漏れが、ゲージ数の高いペンシルポイント針で起こり得るとは、考えにくいと思っております。
色々と素人考えを書いて申し訳ございません。
yuuki様
コメントありがとうございます。
御指摘の点、全くその通りです。同感です。
脚気論争の時代、陸軍医達が、あれこれ理屈をこねて、高木兼寛先生の説を否定しようとしました。なんとなく、脳脊髄液減少症を取り巻く状況は、その頃に似ている気がしています。
とはいえ、一刻も早い認知と、より深い病態解明などを望みます。
高橋浩一 先生 yuuki様
「穿刺」という言葉に過剰反応してしまいます。汗
なぜなら、リンパ系の腫瘍の患者は、一度は(私は三度)骨髄穿刺をしているからです。
そこから、何か漏れている? 大変だあ~そんな感じです。
…私の場合、あれは、針ではなく、ドライバー大でしたが…泣
医学的な事は、よく存じませんが、脚気論争にも、科学的要素以外の諸事情が絡んでいたように理解しております。
脳脊髄液減少症の患者様やご家族のために、一刻も早く、科学的に正しい理論が立証されることを、心より望みます。
F様
コメントありがとうございます。
骨髄穿刺は大変だったと思います。
腰椎穿刺は、骨髄穿刺に比べると、軽いと思います。
渡辺淳一先生の小説では、腰椎穿刺が非常に痛みを伴い・・・的に書かれていて、当院を受診される方で、ビビられる方も少なくありませんが、骨の変形が強くなければ、大体30分以内で終わります。
採血より痛くなかった!と言って下さる方もいます。
話は少々それましたが、脳脊髄液減少症にご理解頂き、本当に感謝です。本当に、一日でも早い立証を望みます。
高橋浩一 先生
「脚気論争」もそうだったでしょうが、私は「旧石器時代の存在」に同じ事を感じています。
旧石器を発見した相沢忠洋氏が一介の?納豆売りだったために、その理論は、長い間「無視」し続けられていました。
史観も学説もそうだと思いますが、本来、科学的に正しいはずの正論が、特定の権力によって左右される。
ある場合には認められない。というような、きわめて「非科学的な」状況が実在するのが世の中の常です。
私はいつも生徒に言っています。「ものごとは、理科的には、きわめて明快に解決するが、社会科的には、なかなか一筋縄ではいかないんだよ。」と…。
脳脊髄液減少症も、「社会科的な迷路」に奥深く迷い込んでいかないよう、社会科的な側面から応援しております。理科的なお手伝いは能力的に出来ないし、医師法にも触れると思うので…笑
あきちゃんで~す様
いつもコメントありがとうございます。
正論が特定の権力により左右される・・・今まで何回、このような事が繰り返されたのでしょうか?
古くは、地動説を唱えたガリレオ・ガリレイが有名と思います。
歴史的な事は他人事のように感じていましたが、今は、正論を証明する困難さを感じています。
科学的なアピールは頑張って続けていきますので、今後ともサポートなどよろしくお願い申し上げます。
高橋さま
こんばんは、はじめまして。
唐突ですが、先生のブログを私のブログに
リンクさせて頂きました。
脳脊髄液減少症の友達がいます。
難病指定、保険の適用、判断基準によって起こる問題などについて患者さんたちとともに考え発信し行動し、改善していきたいと思っています。
どうぞよろしくお願い致します。
はなろこ様
コメントありがとうございます。
御友人のための御協力、御理解、ありがたく思います。
まだまだ認知度が低い疾患です。今後とも御協力よろしくお願い申し上げます。