特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫
第15回 日本脳脊髄液減少症研究会
多くの演題を頂きましたが、それぞれ、皆意義のある発表でした。
何回かにわたって、このホームページにて頂いた演題から得た知見を報告していきたいと思います。
まずは「特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫」。
特発性低髄液圧症候群は、脳脊髄液減少症の中の一部で、起立性頭痛や、MRIでびまん性硬膜造影像を示すなど、典型的な臨床像を呈する疾患です。
今回の発表で、後遺症を呈するなど予後が不良であった症例は、診断や判断の遅れから、治療が遅れたのが原因と考えられます。
そのため、診断が極めて重要です。
「起立性頭痛」といっても、病状の程度に差があるなど、その実態がなかなか診断につながらない場合もあるようです。
また、「でびまん性硬膜造影像」で診断が確定できますが、10-20日位経過しないと陽性所見として表れません。発症早期では表れないことが多いです。
それから慢性硬膜下血腫合併症例は、典型的な起立性頭痛を呈さない症例も少なくありません。
保存的治療が、すぐに効果を示さない場合は、慢性硬膜下血腫が増えないうちにブラッドパッチなど加療を考慮すべきです。
また、慢性硬膜下血腫が症状を出していると考えられる場合は、慢性硬膜下血腫に対して手術を迷わずに行うべきでしょう。
体位に影響を受けない頭痛の場合は、慢性硬膜下血腫が悪さをしている可能性があります。
さらに本研究会では、「静脈洞血栓症を合併した特発性低髄液圧症候群の1 例」を報告させて頂きました。
静脈洞血栓症は慢性硬膜下血腫とともに、特発性低髄液圧症候群に伴う合併症の一つです。
保存的加療で、症状がなかなか改善しない場合は、ブラッドパッチなど施行すべきです。
今春からブラッドパッチが保険適用となるので、状態が不良になる前に治療される症例が増えていくのではと期待しています。
-
前の記事
感謝と御礼 2016.03.15
-
次の記事
脳脊髄液減少症に伴う視機能異常 2016.03.23
高橋浩一 先生
先の第15回研究会に、私のような門外漢にまでお声をかけていただき、ありがとうございました。
出させていただいた感想や疑問点などがいくつかあるのですが、高橋先生のコンテンツに沿って、書き込ませていただければ幸いです。
まず全体的に感じたことは、基礎医学系の先生方の発表は、もっと難解なのかと思っておりました。
ご発表の起承転結がはっきりしていて、パワーポイントのプレゼンなども工夫されていて、私のような素人にわかる部分も多かったことに驚いています。
私も、職務上、難しいことを易しく説明しなければならないので、大いに参考になりました。
もう一つは、研究会に出席なさるほどの見識や実力?を持たれたレベルの先生方の中でも、病態に対する認識はずいぶん違うのだなということです。患者側の立場からすれば、ある部分では、これから統一も図られていくべきかと思いました。
今回のコンテンツに関しては、保存的治療から加療的治療への切り替えの時期?について、患者はどのように考えたらいいのか?指針のようなものがあれば、教えていただければ幸いです。
あきちゃんで~す様
コメントありがとうございます。
病態についての認識については、いかなる疾患においても大なり小なり、違いがあるものです。それは、大学での教育や環境、治療症例が同一であり得ないからです。
保存的加療から、いつブラッドパッチに切り替えるべきかについても、病状の状態に加えて、治療を受ける側の考えも重視しているので、なかなか難しいです。ただし、特発性低髄液圧症候群で、保存的加療の効果がすぐに表れない場合は、早期に治療すべきと考えています。
高橋浩一 先生
ご教授ありがとうございました。
いろいろ生意気を申し上げて、失礼の数々、お詫びいたします。
「治療を受ける側の考えも重視して」くださっているとのご回答、大変うれしく思います。インフォームドコンセントの本来あるべき姿だと思います。
病態のご認識の違いがあることは、もちろん理解できるのですが、だからこそ、われわれ患者側にとって、どのDrと巡り合うかがとても大切と、先の研究会で改めて感じたわけです。
「どこの病院でも同じだよ。」とはならないことや、大学病院ばかりがやたらに混雑することなどにも無関係ではないと考えています。
あきちゃんで~す様
コメントありがとうございます。
失礼なんて、とんでもございません。いつも貴重なコメントの数々、感謝しております。
病院や医師も所変われば、違いますが、同じ病気でも、全く同じ人はいないので患者が異なると、対応法や考え方も変えなくてはいけない場合が少なくありません。
可能な範囲で治療を受ける側の考えも重視すべく、診療にのぞんでいきます。