慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群
- 2020.10.20
- 学会・講演・論文
日本脳神経外科学会第79回学術集会 抄録
「慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群の画像所見と予後 ―205例における病態解析―」
【目的】特発性低髄液圧症候群(SIH)に伴う慢性硬膜下血腫(CSDH)症例について、画像所見と治療予後について検討した。
【対象】対象はSIHにCSDHを合併した205例(男性128例、女性77例、平均年齢 48.9歳)であ る。
【結果】保存的加療のみで治癒した症例が33例 (16.1%)、ブラッドパッチを先行した症例は78 例 (38.0%)、血腫洗浄術を先行した症例が54例 (26.3%)、ブラッドパッチ直後に血腫洗浄術を 施行した症例が40例(19.5%)であった。ブラッドパッチ先行例のうち、61例(78.2%)は、初回治療のみで治癒した。 血腫洗浄術先行例のうち、初回手術のみで改善した症例は10例 (18.5%)であった。転帰はブラッドパッチ先行例の1例が、硬膜下血腫手術待機中の脳ヘルニア合併による高次機能障害、視野障害を後遺した。また、手術先行症例中、2例に周術期合併症を認めたが、その他の症例は転機良好であった。診断には造影頭部MRIのびまん性硬膜造影像の他に、脊髄MRIが有用で、施行62例中、55例 (88.7%)に硬膜外水信号病変が認められた。
【考案】SIH合併症例の造影頭部MRIでは、円蓋部硬膜のみならず、小脳テントや大脳鎌も造影されるので、SIH非合併のCSDHとの鑑別に有用な所見である。また脊髄MRIでの硬膜外水信号病変は、SIH合併では高頻度に認められ、診断、経過観察に有用である。SIHに伴うCSH合併例の治療法として、血腫洗浄術を先行した場合、再発や治療が追加になる率が高く、周術期合併症や重篤な後遺症を認める場合がある。そのため、保存的加療にて改善の兆候が乏しい場合は、可及的早期にブラッドパッチを先行すべきである。また血腫量が多い症例や、髄液圧が上昇している症例では、ブラッドパッチ直後に血腫洗浄術を行う方が安全 と考えている。 若年発症で、非外傷性の両側CSDHを認めた場合は、SIH合併を考慮して、診断、治療を行うべきである。
【結論】SIHに伴うCSDHは、適切な治療方針により予後が良好である。診断には頭部および脊髄MRIが有用である。
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