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小児期に発症した脳脊髄液漏出症と自律神経障害

小児期に発症した脳脊髄液漏出症と自律神経障害

【目的】小児期、学童期に発症した脳脊髄液漏出症に対して、自律神経障害である体位性頻拍症候群postural tachycardia syndrome: POTS、起立性調節障害orthostatic dysregulation: ODの関与について考察した。

【対象と方法】2019年1月以降に脳脊髄液漏出症と診断した20歳未満の67例(男性34例、女性33例、平均年齢14.9歳)において、POTS, ODの合併について検討した。

【結果】POTSの合併は20例 (29.9%)、ODと診断された症例は8例 (11.9%) 存在した。POTS、OD両者の合併を認めない群 (non-OD) 39例 (58.2%)と比較すると、発症から脳脊髄液漏出症診断確定までの期間は、non-OD: 12.0ヶ月に対し、POTS: 20.6ヶ月、OD: 28.9ヶ月と、長期化の傾向にあった。明らかな外傷合併はnon-OD: 41.0%に対し、POTS:21.4%、OD: 24.3%であった。

【考案】小児期・学童期の難治性頭痛は、POTS、ODと診断されることが少なくないが、治療に難渋する症例が多い。今回の検討では、脳脊髄液漏出症症例のうちPOTS、またはODと診断された症例が約40%存在し、ともにブラッドパッチが有効であった。脳脊髄液漏出症と自律神経異常との関係は、近年注目されており、POTS, ODとの関連を検討することは重要と思われる。小児期・学童期の難治性頭痛の認知度および、治療成績向上のため、さらなる検討が必要と思われる。

【結論】脳脊髄液漏出症小児期、学童期症例において、ブラッドパッチは有効な治療法である。ODやPOTSと診断されていても、治療効果が乏しい症例では、脳脊髄液漏出症の存在を考えるべきである。