新型コロナワクチンと脳脊髄液減少症
- 2022.04.23
- 学会・講演・論文

先日、姫路にて第一回脳脊髄液漏出症学会が開催され、出席してきました。
現地参加で、有意義なディスカッションができました。
発表演題は「新型コロナワクチン接種が契機で発症したと思われる脳脊髄液減少症の1例」です。
新型コロナワクチン接種が契機で発症したと思われる脳脊髄液減少症は1例増え、5例となり、うち4例が著効、1例が部分改善です。
以下、抄録(一部変更)です。
【目的】新型コロナワクチン接種が契機で発症したと思われる脳脊髄液減少症の1例を経験したので報告する。
【症例】16歳、男性。ハードな運動が可能な健康状態であった。新型コロナワクチン(ファイザー製)を接種、その後より強固な頭痛、めまい、倦怠感など出現した。特効的な治療もなく、日中でも半分以上臥床している状態が持続した。既往症として、アトピー性皮膚炎、過敏性大腸炎、また13歳時、起立性調節障害と診断されたことがあった。複数の総合病院で精査、加療を行ったものの、効果的な治療がなく、強固な症状が持続した。接種約2ヶ月後、CTミエロ、RI脳槽シンチを施行、明らかな髄液漏出像を認めず、RI残存率は33.3% (24時間後) で正常範囲であった。硬膜外生理食塩水注入試験を施行、頭痛が著明に改善したため、脳脊髄液減少症と診断した。その後にブラッドパッチを施行、頭痛、めまい、倦怠感など、ほとんど消失し、ハードな運動が可能な状態に改善した。
【考案】新型コロナワクチン接種は、パンデミック改善のため、有効な手段である。一方で、懸念事項として、人類史上初の遺伝子ワクチンなので、長期の安全性が担保されていない点があげられる。また、本例以外にも新型コロナワクチン接種後の心筋炎や、体調不良が持続している症例も少数であるが、存在している。日本人、特に若年者のコロナ感染による重症化率・死亡率の低さを考えると新型コロナワクチン接種の適応も慎重に考えた方がよいかもしれない。現状、新型コロナワクチン接種後の体調不良に関して、特効的な治療は存在していないと思われる。ただし、一例報告ではあるが、ブラッドパッチが効果を示した症例が存在しているのは間違いない。今後の検討が、とても重要であろう。
【結語】新型コロナワクチン接種が契機で発症したと思われる脳脊髄液減少症の1例を報告した。若年者の新型コロナワクチン接種の適応は慎重に考えた方がよいと思われる。
コメントを書く