岐阜にて
- 2022.06.21
- 学会・講演・論文
第50回 日本小児神経外科学会
「小児期、学童期に発症した脳脊髄液漏出症と起立性不耐症」抄録です。
【目的】小児期、学童期に発症した脳脊髄液漏出症に対して、起立性不耐症である体位性頻拍症候群postural tachycardia syndrome: POTS、起立性調節障害orthostatic dysregulation: ODの関与について考察した。
【対象と方法】2019年1月以降に脳脊髄液漏出症と診断した20歳未満の113例(男性50例、女性63例、平均年齢14.6歳)において、POTS, ODの合併について検討した。
【結果】POTS、OD両者の合併を認めない群 (non-OD群) は64例 (56.6%)、ODと診断された症例は22例 (19.5%) 、POTSの合併は27例 (23.9%)存在した。発症原因として外傷がnon-OD群:24例 (37.5%)、OD:7例 (31.8%)、POTS:7例 (25.9%) 、感染が、non-OD群:2例 (3.1%)、OD:1例 (4.5%)、POTS:2例 (7.4%)であった。
【考案】起立性不耐症も、脳脊髄液漏出症も、体位変換にて症状が悪化し、立位保持が困難であるという共通症状が存在する。前者は循環器、自律神経の異常と考えられ小児科領域では、しばしば遭遇する疾患である。本検討では、脳脊髄液漏出症症例のうち、起立性不耐症症例が約40%存在し、ブラッドパッチが有効であった。近年、脳脊髄液漏出症と自律神経障害との関係が注目されており、起立性不耐症との関連を検討することは重要と思われる。小児期・学童期の難治性頭痛の診断、治療成績向上のため、さらなる検討が必要である。
【結論】学童期発症の脳脊髄液漏出症に対し、ブラッドパッチは有効な治療法である。起立性不耐症と診断されていても、治療効果が乏しい症例では、脳脊髄液漏出症の存在を考えるべきである。
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