特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫
- 2022.10.04
- 学会・講演・論文
特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫243例病態と治療
Chronic subdural hematoma caused by spontaneous intracranial hypotension. Therapeutic strategies and Outcomes of 243 Cases
高橋 浩一1,秋葉 洋一2
1山王病院脳神経外科, 2秋葉病院
【目的】特発性低髄液圧症候群(SIH)に伴う慢性硬膜下血腫(CSDH)症例について、治療方法と予後について検討した。
【対象】対象はSIHにCSDHを合併した243例(男性147例、女性96例、平均年齢 49.5歳)である。これら症例の治療戦略と予後を検討した。
【結果】保存的加療で治癒した症例が33例 (14.5%)、ブラッドパッチを先行した症例は94例 (38.7%)、血腫洗浄術を先行した症例が55例 (22.6%)、ブラッドパッチ直後に血腫洗浄術を施行した症例が61例(25.1%)であった。血腫洗浄術先行症例のうち、治療方針が定まっていない時期の2例を除く53例が、他施設で施行された。ブラッドパッチ先行94例中、74例(78.7%)は、初回治療のみで治癒した。血腫洗浄術先行55例中、初回手術で改善した症例は10例 (18.2%)で、2例に周術期合併症を認めた。予後はブラッドパッチ先行例の1例が、硬膜下血腫手術待機中の脳ヘルニア合併による高次機能障害、視野障害を後遺した。ブラッドパッチ治療保険収載前の症例である。その他の症例は転機良好であった。
【考案】SIHに伴うCSDH合併例の治療法として、血腫洗浄術を先行した場合、再発や治療追加になる率が高く、重篤な後遺症を認める報告が散見される。そのため保存的加療が有効でない場合は、治療時期を逸せずにブラッドパッチを先行すべきと報告してきた。また血腫量が多い症例や、髄液圧が上昇している症例では、ブラッドパッチ直後に血腫洗浄術を行う方が安全と考えている。硬膜下血種が少量であっても、起立性頭痛が強固な症例や、血種が増大傾向にある症例では、保存的加療が限界、もしくは長期を要する可能性が高い。さらに、短期間に血腫量が増大し、意識障害が進行する症例も経験している。経過観察中の急変は、何としても避けるべきであるが、本病態は、認知度が高くない。若年で非外傷性、両側CSDH症例では、SIHの合併を念頭に精査を行い、可及的早期に治療を検討すべきである。
【結論】SIHに伴うCSDHは、適切な治療方針により予後が良好である。
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