急性視力障害と脳脊髄液減少症
- 2023.03.26
- 学会・講演・論文
第二回日本脳脊髄液漏出症学会
次に発表させて頂いたのは、
「両側急性視力障害を主訴とした脳脊髄液減少症の2例」
です。
視力障害を主訴としながらも、眼科的異常が明らかでない場合、ヒステリーを代表する心因性と判断されがちです。
疾患名としては、非器質的視覚障害、心因性視覚障害と診断される事が多いです。
事実、今回提示した2症例は、大学病院をはじめ、複数の医療機関を受診したものの、原因不明、または心因性と判断されました。
しかし、提示した2症例のように急激な両側視力低下の原因が脳脊髄液減少症で生じ、ブラッドパッチで劇的に改善する症例が存在しています。
抄録は以下の通りです。
………………………..
両側急性視力障害を主訴とした脳脊髄液減少症の2例
Two cases of acute bilateral visual impairments associated with cerebrospinal fluid leak
高橋 浩一
山王病院脳神経外科
【目的】ほとんど視力喪失に近い両側視力低下がブラッドパッチにより劇的に改善した脳脊髄液減少症の2例を経験したので報告する。
【症例1】14歳、女性。新型コロナワクチン(ファイザー製)接種4日後より視力低下(両眼とも矯正視力0.01)、頭痛、嘔気など出現し、徐々に進行した。ほとんど臥床状態となり、発症2か月後に当院を受診した。硬膜外生理食塩水注入試験の効果により脳脊髄液減少症と診断し、ブラッドパッチを施行した。治療後、速やかに頭痛は消失し、視力は両側ともに1.2に改善した。
【症例2】17歳、女性。突然、誘因なく両側視力低下(両眼とも矯正視力0.01)、頭痛など出現し、発症8か月後に当院を受診した。CTミエロ、RI脳槽シンチにて髄液漏出像を認め、脳脊髄液減少症と診断した。2回のブラッドパッチを施行し、頭痛消失、視力は両側ともに1.0に改善した。
【考案】急激に発症する両側視力低下は、眼科的疾患、もしくは頭蓋内圧亢進などの器質的異常が明らかでない場合、ヒステリーを代表する心因性と判断されることが多い。事実として今回提示した2症例は、ともに大学病院をはじめ、複数の医療機関を受診したが、原因不明、または心因性と判断された。しかし、これら2症例のように急激な両側視力低下の原因が脳脊髄液減少症である場合、ブラッドパッチにより改善が期待できる。視力低下を生じる機序として、視神経周囲の、くも膜下腔狭小化による視神経への障害が考えられている。しかし、眼底検査による視神経乳頭所見は正常であり、可逆性の、ほとんど視力喪失に近い両側視力低下の原因としては、他の機序が存在するかもしれない。脳脊髄液減少症の認知度向上とともに、髄液の動態、機能についてさらなる検討が必要と思われた。
【結語】両側視力低下を主訴とした脳脊髄液減少症の2例を報告した。視力低下の器質的異常が明らかでない場合、脳脊髄液減少症を鑑別診断として考えるべきである。
Key words: cerebrospianl fluid leak, acute bilateral visual impairments, epidural blood patches
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