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コロナワクチン接種後の学童期脳脊髄液漏出症

コロナワクチン接種後の学童期脳脊髄液漏出症

ブラッドパッチにより改善したコロナワクチン接種後体調不良の学童期脳脊髄液漏出症6例 

Six cases of cerebrospinal fluid leakage in adolescents following COVID-19 vaccine effectively treated by epidural blood patches

【目的】新型コロナワクチン接種後に体調不良が出現し、ブラッドパッチが有効であった脳脊髄液漏出症の6例を経験したので報告する。


【対象と方法】新型コロナワクチン接種後体調不良9例中、20歳未満に発症した6例(男性4例、女性2例、14-17歳)において、臨床像、予後について検討した。


【結果】6例全例が、ファイザー社製ワクチン接種後10日以内に体調不良が出現した。4例が初回接種後、2例が2回目接種後に発症し、症状は、全例に頭痛を認めた。画像検査で明らかな髄液漏出像を示した症例は1例(11.1%)のみであった。全例にブラッドパッチを施行し、著名改善4例 (66.7%) を含む全症例に何らかの改善を認めた。


【考案】新型コロナワクチン接種は、パンデミック改善のため有効な手段であり、ワクチン接種により生じる有害事象は、未接種感染による有害事象よりも頻度が少ないと報告されている。一方で、新型コロナワクチンには、心筋炎や血栓症などの合併症があり、そのリスクは、若年者に高いと報告されている。若年者の新型コロナ感染による重症化率・死亡率の低さを考えるとワクチン接種の適応は慎重に考えるべきである。現状、新型コロナワクチン接種後の体調不良に関し、特効的治療の報告は存在しない。今回提示したブラッドパッチが効果を示した6症例は、今後の検討に値すると思われる。


【結語】新型コロナワクチン接種が契機で発症し、ブラッドパッチが有効であった6例を報告した。新型コロナワクチン接種後に体調不良が持続している症例では、脳脊髄液漏出症を鑑別すべきである。