脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

小児期・学童期の頭痛と脳脊髄液減少症

小児期・学童期の頭痛と脳脊髄液減少症

【目的】小児期、学童期に発症した脳脊髄液減少症について、臨床像、予後を中心に検討した。

【対象と方法】2019年1月以降に脳脊髄液減少症と診断した20歳未満の158例(男性71例、女性87例)において、体位性頻拍症候群postural tachycardia syndrome: POTS、起立性調節障害orthostatic dysregulation: ODの関与について考察した。また予後に関して、15歳以下発症で5年以内にブラッドパッチを施行した195例(男性99例、女性96例)について検討した。

【結果】対象症例中、ODと診断された症例は26例 (16.5%) 、POTS合併は35例 (22.2%)存在した。治療効果に関して、ブラッドパッチ前は、104例(53.4%)が通学不能で、うち52例(26.7%)は、ほとんど寝たきり状態であった。これがブラッドパッチ施行後には、症状消失74例(37.9%)を含む178例(91.3%)が、就学可能な状態に改善した。

【考案】脳脊髄液減少症は、起立性頭痛が代表的な症状であるが、朝が弱い、倦怠感などの症状を呈する症例も少なく、半数は不登校である。心身症や、OD、POTSと判断されている症例も多い。本検討では、脳脊髄液減少症症例のうち、OD、POTSが約40%存在し、ブラッドパッチの有効率は9割以上であった。ODやPOTS、心身症などと診断されていても、難治性の不定愁訴症例では、脳脊髄液減少症の可能性を考慮すべきである。

【結論】学童期発症の脳脊髄液減少症に対し、ブラッドパッチは有効な治療法であり、認知度向上が望まれる。