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硬膜外加圧療法の治療効果に関する考察

硬膜外加圧療法の治療効果に関する考察

硬膜外加圧療法の治療効果に関する考察

Mechanism of epidural space pressurization

高橋 浩一1, 三浦 真弘2

1山王病院脳神経外科, 2 大分大学医学部解剖学

Koichi Takahashi1, Masahiro Miura2

Department of Neurosurgery, Sannou Hospital1,

Department of Anatomy, Oita University2

【目的】脳脊髄液漏出症では、起立性頭痛をはじめ、多彩な症状を呈する症例が多い。本症の治療には、ブラッドパッチや硬膜外生理食塩水注入、さらに近年、硬膜外気体注入療法といった硬膜外加圧療法が有効とされている。しかし、本治療法効果機序など、不明な点が多く残されている。今回、硬膜外気体注入療法の作用機序について基礎医学的知見を踏まえて検討を試みた。 

【方法】硬膜外気体注入療法の治療効果について、対象症例の画像所見、髄液の産生と吸収様式に関する解剖学的データ、およびブラッドパッチのin-vivo検証実験を踏まえて検討した。  

【結果】脳脊髄液漏出症は、強固な頭痛を主訴とする症例がほとんどで、硬膜外加圧療法後には、頭痛のみならず、高次機能障害、不随意運動、視覚異常、聴覚障害、味覚障害、運動障害など改善した症例が存在した。脳脊髄液漏出症のRI脳槽シンチ、CTミエロでは、髄腔内の造影剤が脊髄神経根から、脊柱傍筋群や神経根周囲の軟部組織に進展する所見が得られた。またニホンザルを用いたブラッドパッチのin-vivo検証実験では、脂肪組織の存在により、硬膜に対するシール効果は不十分であったが、髄注ICG蛍光観察では傍椎骨リンパ節への経リンパ管吸収量は明らかに低下した。 

【考案】硬膜外加圧療法の効果に関して、注入物質によるシール効果が有名である。近年、脊髄硬膜外リンパ系吸収の構造が解明され、髄液吸収調節に重要な機能が示唆され、脳脊髄液漏出症の一病態として、これら機能不全による髄液吸収異常亢進が考えられる。in-vivo検証実験の結果は、硬膜外加圧により髄液圧と硬膜外圧格差の減少が生じ、脊髄硬膜外リンパ系吸収系を介した髄液吸収量の低下が示唆される。しかし、不明な点もあり、さらなる検討が必要と思われる。

【結語】硬膜外加圧療法の作用機序を検討することは、脳脊髄液漏出症の診断、治療成績向上と同時に、脳脊髄液の動態、機能解明につながる。