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特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫の診断と治療

特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫の診断と治療

【目的】特発性低髄液圧症候群(SIH)に伴う慢性硬膜下血腫(CSDH)症例について、治療方法と予後について検討した。

【対象】対象はSIHにCSDHを合併した263例(男性162例、女性101例、平均年齢 49.7歳)である。これら症例の診断と治療予後を検討した。

【結果】対象症例中、両側性硬膜下血腫は239例 (90.9%) 存在した。画像所見に関して、脊髄MRIを施行した118例中、99例 (83.9%)に硬膜外水信号病変が明確に認められ、全例で、経過とともに病変が不明瞭となった。治療成績は、保存的加療で治癒した症例が33例 (12.5%)であった。ブラッドパッチを先行した100例 (38.0%)中、79例(79.0%)、ブラッドパッチ直後に血腫洗浄術を施行した71例(27.0%)中、67例 (94.4%) が、初回治療のみで治癒した。血腫洗浄術を先行した症例は59例 (22.4%)で、初回手術で改善した症例は11例 (18.6%)であった。また2例に周術期合併症を認めた。予後はブラッドパッチ先行例の1例が、硬膜下血腫手術待機中の脳ヘルニア合併による高次機能障害、視野障害を後遺した。ブラッドパッチ治療保険収載前の症例である。その他の症例は転機良好であった。

【考案】SIH合併症例の造影頭部MRIでは、円蓋部硬膜のみならず、小脳テントや大脳鎌も造影され、SIH非合併のCSDHとの鑑別に重要な所見である。また脊髄MRIでの硬膜外水信号病変は、SIH合併では高頻度に認められ、症状改善とともに不明瞭化していくため、診断、経過観察に有用である。治療法として、血腫洗浄術を先行した場合、再発や治療追加になる率が高く、重篤な後遺症を認める報告が散見される。また短期間に血腫量が増大し、意識障害が進行する症例も経験している。今回の検討では保存的加療が有効でない場合は、治療時期を逸せずにブラッドパッチを先行し、良好な治療成績を得ている。若年で非外傷性、両側CSDH症例では、SIHの合併を念頭に精査を行い、可及的早期に治療を検討すべきである。

【結論】SIHに伴うCSDHは、適切な診断と治療方針により予後が良好である。