脳脊髄液漏出症の病態と治療
- 2023.12.12
- 学会・講演・論文
脳脊髄液漏出症の病態と治療
高橋 浩一, 三浦 真弘
【目的】脳脊髄液漏出症では、起立性頭痛をはじめ、多彩な症状を呈する症例が多い。しかし本症発現機序やブラッドパッチの効果等、不明な点が多く残されている。今回、本症の病態について基礎医学的知見を踏まえて検討を試みた。
【方法】脳脊髄液漏出症の臨床病態に関して、髄液産生と吸収様式に関する組織・解剖学的データとの整合性を検証した。
【結果】脳脊髄液漏出症は、難治かつ強固な頭痛を主訴とする症例が殆どで、ブラッドパッチ後には頭痛のみならず、高次機能障害、不随意運動、視覚異常、聴覚障害、味覚障害など改善症例が存在した。本症のRI脳槽シンチ、CTミエロでは、髄注した造影剤が脊髄神経根鞘から、脊柱傍筋群や神経根周囲結合織に貯留する所見が得られた。またニホンザルを用いたブラッドパッチのin-vivo検証実験では、神経根下脂肪パットが介在するため硬膜に対するシール効果は不十分であったが、髄注ICG蛍光観察では傍椎骨リンパ節への経リンパ管吸収量は明らかに低下した。
【考案】ブラッドパッチの1つの効果は、注入自家血による髄液圧と硬膜外圧格差の減少に伴う髄液吸収量低下が関係すると考えられる。しかし、本症に伴う多彩な症状出現と治療効果機序について、未だ不明な点が多い。近年、髄液圧調節に脊髄硬膜外リンパ系を介する生理的吸収路の役割が示唆されてきたことから、本症の一病態も、これらの機能不全または異常髄液吸収亢進との関連も考慮すべきであろう。特に、脊髄神経根に生じる髄液吸収機序解明が進むことは、難治性頭痛に対する治療成績向上、さらには髄液循環生理において重要な新知見をもたらす可能性も推測される。
【結語】脳脊髄液漏出症の理解は、難治性頭痛に対する診断、治療成績向上と直結し、脳脊髄液の動態、機能解明につながる可能性が示唆された。
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