髄液減少症に伴う認知障害
- 2024.10.01
- 学会・講演・論文
髄液減少症に伴う認知障害
【目的】髄液異常に伴う認知障害といえば、正常圧水頭症代表的である。一方、髄液減少症でも、高次機能障害を生じる症例が存在する。しかし、その機序は不明である。今回、髄液減少症に高次機能障害を呈した症例を提示し、髄液の機能について検討を試みた。
【症例】13歳女性。交通事故後に頭痛や嘔吐、背部痛、腰痛、著明な記銘力障害など出現した。受傷前はクラストップの学力であったがIQ全検査41、書字不能と幼児レベルの知能となった。頭部MRI上、特記すべき異常を認めず、受傷6か月後に山王病院を受診した。RI脳槽シンチにてRI注入1時間後の明白な膀胱内RI集積、およびRI残存率の著明な低下 (8.6%, 24時間後) を認め、髄液減少症と診断、ブラッドパッチを施行した。治療後、書字可能となりIQ全検査は69と、やや改善した。
【考案】正常圧水頭症の発症は、脳脊髄液循環障害と脳血管障害の両要素が関与するといわれている。一方、髄液減少症は頭痛の他にめまい、耳鳴り、倦怠感、視覚異常など多彩な症状を呈する症例が多い。提示した症例のように高次機能障害を呈する症例も存在するが、その発症機序には、不明な点が多い。近年、脊髄硬膜外リンパ系吸収の構造が解明され、髄液吸収調節能に重要である可能性が示唆されている。これら機能障害による髄液吸収不全により正常圧水頭症、吸収過剰により髄液減少症が発生すると考えられるが、認知障害発症機序に関する根拠は不十分である。これらの詳細メカニズム解明は、髄液循環生理のみならず認知機能の病態解明において新たな知見をもたらす可能性が高い。
【結語】髄液の異常と認知障害発生機序を検討することは、脳脊髄液の動態のみならず認知機能解明につながる可能性が示唆された。
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