低髄に伴う慢性血腫の治療戦略
- 2024.11.05
- 学会・講演・論文
特発性低髄液圧症候群に伴う慢性硬膜下血腫の治療戦略 ―271例からの検討
【目的】特発性低髄液圧症候群(SIH)に伴う慢性硬膜下血腫(CSDH)症例について、治療方法と予後について検討した。<BR> 【対象】対象はSIHにCSDHを合併した271例(男性167例、女性104例、平均年齢 49.9歳)である。これら症例の予後から治療戦略を検討した。
【結果】治療成績は、ブラッドパッチを先行した100例 (36.9%)中、79例(79.0%)、ブラッドパッチ直後に血腫洗浄術を施行した79例(26.2%)中、75例 (94.9%) が、初回治療のみで治癒した。血腫洗浄術を先行した症例は60例 (22.1%)で、初回手術で改善した症例は11例 (18.3%)であった。また2例に周術期合併症を認めた。血種洗浄術先行例のほとんどは他院からの紹介である。保存的加療で治癒した症例は33例 (12.2%)であった。予後は、ブラッドパッチ治療保険収載以前にブラッドパッチを先行した1例が、硬膜下血腫手術待機中の脳ヘルニア合併による高次機能障害、視野障害を後遺した。その他の症例は転機良好であった。
【考案】治療法として、血腫洗浄術を先行した場合、再発や治療追加になる率が高く、周術期合併症も少なくない。また重篤な後遺症を認める報告が散見される。保存的加療にて短期間に血腫量が増大し、意識障害が進行する症例も経験している。今回の検討では、保存的加療が有効であった症例は、血種量が少量で、症状が軽度もしくは改善傾向にある症例である。一方、血種量が少量であっても起立性頭痛が顕著な症例では、治療時期を逸せずにブラッドパッチを先行し、良好な治療成績を得ている。若年で非外傷性、両側CSDH症例、血種量に対して症状が強固な症例では、SIHの合併を念頭におくべきである。診断は、SIH合併では造影頭部MRIにて円蓋部硬膜のみならず、小脳テントや大脳鎌も造影される。また脊髄MRIでは硬膜外水信号病変が高頻度に認められ、SIH非合併CSDHとの鑑別に重要である。そして診断確定後には、可及的早期に治療を検討すべきである。
【結論】SIHに伴うCSDHは、適切な診断と治療方針により予後が良好である。
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