ブラッドパッチが有効な症例について
- 2024.12.03
- 学会・講演・論文
【目的】ブラッドパッチは、脳脊髄液漏出症、低髄液圧症、腰椎穿刺後頭痛に有効な治療である。ブラッドパッチが効果を示す症例は、これらの疾患にとどまらず多岐にわたる。今回、他疾患と診断された、もしくは典型的ではない症状を呈したがブラッドパッチが有効であった症例について考察を試みた。
【対象と方法】難治性不定愁訴が持続したため山王病院を受診し、ブラッドパッチが効果を示した症例を提示し、臨床像を中心に検討した。
【結果】自律神経失調、起立性調節障害、体位性頻拍症候群、脳表ヘモジデリン沈着症、新型コロナワクチン接種後体調不良、新型コロナ感染後遺症、子宮頸がんワクチン接種後体調不良、脊髄手術後に出現した神経学に説明困難な症状、眼科的に説明困難な視覚異常、難治性不随意運動症例など、ブラッドパッチが効果を示した症例が存在した。
【考案】ブラッドパッチは、注入血液によるシール効果と、注入自家血による髄液圧と硬膜外圧格差の減少に伴う髄液吸収量低下が関係すると考えられる。近年、髄液圧調節に脊髄硬膜外リンパ系を介する生理的吸収路の役割が示唆されてきた。脊髄レベルでの髄液吸収に関して、自律神経が役割を果たしている可能性があり、愁訴が自律神経失調に由来している場合は、髄液吸収亢進との関連を考慮すべきであろう。脳表ヘモジデリン沈着症は、長期にわたる硬膜欠損からの髄液漏出が原因であることがわかってきた。しかし、自律神経失調に由来すると思われる諸症状や、神経学的、眼科的に説明困難な運動障害や視覚異常の症状出現機序、およびブラッドパッチにて改善するメカニズムは不明である。これらを解明することで髄液と自律神経の関係、機能について新たな知見が得られる可能性がある。
【結語】難治性不定愁訴の症状発現機序、ブラッドパッチの効果を検討することで、脳脊髄液の動態、機能解明、そして自律神経との関係性の理解につながる可能性がある。
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