脳脊髄液減少症や水頭症など脳脊髄液循環障害を専門に診療を行っている高橋浩一の公式サイトです。

再発を繰り返す慢性硬膜下血腫

再発を繰り返す慢性硬膜下血腫

本日発売の夕刊フジ、「これで私は助かった!!」のコーナーで、脳脊髄液減少症に伴う慢性硬膜下血腫を取り上げて頂きました。そして「専門医はこう見る」で、コメントを述べさせて頂いています。

脳脊髄液減少症に伴う慢性硬膜下血腫は、30例以上の症例を治療させて頂き、全例、回復しています。

しかし今まで、2例、治療に際して危ない橋を渡りました。

1例目:40代、男性

他院にて両側慢性硬膜下血腫の診断で手術を施行、一時的に頭痛は軽減しましたが、翌日には強固な頭痛が出現、数日後に再手術を受けました。

しかし、手術の効果は一時的で合計3回の手術を受けました。慢性硬膜下血腫自体は、手術で十分に摘出されているにもかかわらず、意識障害が進行、ついには呼吸不全も併発し、呼吸器を使用する状態にまで悪化しました。

そこで、その病院の担当医師が脳脊髄液減少症の存在を疑い、造影MRIを施行すると、典型的な「びまん性硬膜造影像」が認められ、その時点で依頼を頂きました。

2回のブラッドパッチを施行すると、みるみるうちに意識状態は改善し、今では完全に社会復帰しています。

2例目:40代、男性

脳脊髄液減少症に伴う慢性硬膜下血腫の診断で、他院より紹介頂きました。

頭痛が非常に強固で、慢性硬膜下血腫量も多かったので、最初に慢性硬膜下血腫に対して手術を行い、続いてブラッドパッチを行う方針としました。

慢性硬膜下血腫の手術を開始すると、途端に血圧が50mmHg代に下がり、脈拍数が30代に低下し、意識障害が出現しました。

すぐに血腫を洗浄して手術を終わらせ、間髪入れずにブラッドパッチを施行、直ちに、意識も血圧も脈拍数も回復しました。

その後、慢性硬膜下血腫の手術を1回追加しましたが、この方も完全に社会復帰しています。


2例に共通しているのは、ブラッドパッチを施行しなければ、救命できなかった可能性があるという事です。

これらの症例に関しては、日本脳神経外科学会第69回学術総会をはじめ、いくつかの研究会などで発表させて頂いています。