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慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群の治療方針と予後

慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群の治療方針と予後

日本脳神経外科学会第71回学術総会

診断基準や治療法など活発な討論がありました。

以下、私の演題、抄録です。

慢性硬膜下血腫を合併した特発性低髄液圧症候群の治療方針と予後 -47例の検討-

目的

慢性硬膜下血腫 (CSH) を合併した特発性低髄液圧症候群 (SIH) 47例において、治療法、予後を中心に臨床像について検討した。 

対象と方法

象は2006年から2012年6月にCSHを合併したSIHと診断した47例(男性30例、女性17例、平均年齢48.3歳)である。これらの症例について本症の病態について考察した。

結果

ほとんどの症例が起立性頭痛にて発症し、頭部MRI上、CSHに加え、びまん性硬膜造影像を呈した。CSHは両側が41例、片側が6例であった。治療は、保存的加療で治癒した症例が12例 (25.5%)、ブラッドパッチを先行した症例は20例 (42.6%)、血腫洗浄術を先行した症例が15例 (31.9%)であった。ブラッドパッチを先行した20例中、後に血腫洗浄術が必要となった症例が7例存在した。また、血腫洗浄術を先行した15例中、10例に、その後の経過でブラッドパッチを追加した。治療予後は血腫洗浄術を先行し、その後、意識障害、呼吸不全を生じて、ブラッドパッチを追加した1例に軽度の構語障害を後遺したが、その他は神経学的異常を認めず、経過良好であった。

考案

CSHを合併したSIHの治療法として、保存的加療にて症状が軽快する症例が25%近く存在し、まずは保存的加療を試みるべきである。症状が強固に持続する症例では、治療を考慮すべきだが、血腫洗浄術を先行した場合、再発の可能性が高く、また術中、術後に呼吸不全を呈した症例が2例存在した。一方でブラッドパッチを先行した場合、それのみで治癒する症例が半数以上存在し、重篤な合併症を認めなかった。そのため、本病態で治療が必要な場合は、まずブラッドパッチを行い、直後に、もしくは経過観察中に、頭痛の増強や慢性硬膜下血腫量が増大する場合には血腫洗浄術を行うべきである。

結論

CSHを合併したSIHは適切な治療により、予後が良好である。治療法は保存的加療にて効果が乏しい場合はブラッドパッチを行い、その後の経過により血腫洗浄術を検討すべきである。