髄液減少症から髄液の機能と動態を考える
- 2025.12.24
- 学会・講演・論文
【目的】脳脊髄液が減少する病態、髄液減少症では、頭痛のみならず、めまい、耳鳴りなど多彩な症状を呈する。これに対し、ブラッドパッチや硬膜外生理食塩水注入、さらに近年、硬膜外気体注入療法といった硬膜外加圧療法が有効である。しかし、本症に伴う多彩な愁訴の発現ならびに本治療の効果機序には、不明な点が多く残されている。今回、髄液減少症症例から髄液の機能、循環動態について考察した。
【方法】硬膜外加圧療法を施行した髄液減少症症例より、臨床病態と治療効果の発現機序を検討した。
【結果】髄液減少症は、難治かつ強固な頭痛を主訴とする症例が殆どであった。硬膜外加圧療法後には頭痛のみならず、高次機能障害、不随意運動、視覚異常、聴覚障害、味覚障害、自律障害などが改善する症例が存在した。また難治性のコロナ感染後遺症や、コロナワクチン後遺症、子宮頚がんワクチン後遺症、慢性疲労症候群に対しても硬膜外加圧療法が有効な症例が存在した。
【考案】近年、脳脊髄液には、脳内免疫機能や、脳、脊髄の代謝産物の排泄機能を有することが解明され、髄液圧調節に脊髄硬膜外リンパ系を介する生理的吸収路の役割が示唆されてきた。そして髄液減少症の一病態には、脊髄硬膜外リンパ系を介した髄液吸収亢進との関連性が指摘されている。これにより脳下垂が生じて、起立性頭痛などの症状発現につながると考えられている。硬膜外加圧療法は、注入物質による髄液圧と硬膜外圧格差の減少により、髄液吸収量を低下させ、脳下垂を改善させ、頭痛軽減などの効果を示すと考えられている。ブラッドパッチは、それに加えて血液によるシール効果を持つ。しかし硬膜外加圧や髄液漏出部閉鎖作用によって多彩な症状が改善するメカニズムを説明することは困難であり、未だに謎が多い。髄液吸収機序解明は、不定愁訴の発現機序、さらには髄液循環生理にて新知見をもたらす可能性も推測される。症例の蓄積とともに、さらなる検討が必要と考えている。
【結語】髄液減少症の病態および硬膜外加圧療法の効果を検討することは、髄液減少症の治療成績向上のみならず、脳脊髄液の循環動態、機能解明につながる。



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