特発性正常圧水頭症の髄液動態
- 2026.02.25
- 学会・講演・論文
特発性正常圧水頭症(iNPH)の髄液動態 特発性低髄液圧症 (SIH)との相違性からみた考察
Dynamics and function of cerebrospinal fluid for iNPH : Consideration from the differences with spontaneous intracranial hypotension (SIH)
高橋 浩一1, 三浦 真弘2, 橋本 康弘3、宮嶋 雅一4
目的:iNPHの髄液動態について、画像所見および基礎医学的知見に基づいてSIHと比較検討を試みた。
方法:iNPHとSIHの画像所見と脊髄硬膜外リンパ系(SEDLS)の酵素組織学的解析、そして髄液産生マーカーと推測される髄液中脳型トランスフェリン(Tf-1)の測定により、iNPHの髄液動態の特徴を検討した。
結果:iNPHではDESH所見、SIHでは脳の下垂が特徴な画像所見である。CTミエロでは、iNPHでは脊髄神経節近位端を描出境界とするのに対し、SIHでは脊髄神経節より遠位まで造影剤の繊維内伸展が認められた。Tf-1は、iNPHで優位に低下し、シャント手術により正常化した。一方SIHでは、有意差(P<0.001)をもって上昇した。
考案:SEDLSは上位髄節域を中心に硬膜神経根基部に、弁を有し、平滑筋が発達した拡張リンパ管から起始するリンパ管網が発達し、それは加齢性退縮を特徴とする。高齢者に好発するiNPHのCTミエロ所見は、SEDLSの加齢変化に伴う脊髄レベルでの髄液吸収の低下を示唆させる。そして髄液吸収不均衡により、脳レベルでDESH所見が生じることが推測される。またTf-1の低下は、髄液貯留により髄液産生が抑制される可能性を考慮している。これに対し、SIHのCTミエロ所見は、SEDLSによる非生理的髄液過剰吸収が生じて、髄液量が減少し、脳下垂が生じるとも考えられる。さらにTf-1高値は、髄液減少を代償することによる髄液産生が亢進するというiNPHと異なる機序が類推される。しかしiNPHに伴う歩行障害をはじめ、未だ不明な点が多く残されている。これらの機序解明は、iNPHの病態、髄液循環生理において新たな知見をもたらす可能性が高い。
結論:iNPHでは髄液吸収低下が脊髄レベルで起こるためDESH所見および髄液産生抑制が生じ可能性が示唆された。



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